知の道4:業と縁


ホームへもどる.indexへもどる.

博士 (ごう) (ごう)(ごう)(ごう) (ごう) (ごう)
ヒヨコ君 なんですかそれは.
博士 重い言葉もリズミカルに言えばちょっとは軽くなるかなと思ってな.
ヒヨコ君 軽くなるというよりも訳分かんなくなってます
博士 う,裏目に出てしまったか...ここんとこ話が重いのでこうでもせんとやっとれんわい.
ヒヨコ君 確かに重い空気ですが,訳わかんなくしてどうするんですか.
博士 でも,業という言葉は頭に焼きついたじゃろ.
ヒヨコ君 う,ひょっとしてそれは洗脳ですか.
博士 そうそう,軽ーい雰囲気のノリで,繰り返すと...って別に洗脳するつもりはないわい.雰囲気を変えたいだけじゃ.
ヒヨコ君 確かに雰囲気は変わりましたね.
博士 で,業の説明は終わり.次は (えん) (えん)(えん)(えん) (えん) (えん)♪っヘイッ!!
ヒヨコ君 ちょっとちょっとーっ!説明になってないですよ!
博士 やっぱり駄目か.これで説明終わりに出来れば楽かなーと思ってな.
ヒヨコ君 子供でもだまされませんよ.で,業って何ですか.
博士 業でーす♪みんな元気かーい!!
ヒヨコ君 僕帰ります...
博士 いやいやもうちょっとつきあってくれい.
ヒヨコ君 絶対帰ります.
博士 すまん.重い雰囲気に耐え切れない年寄りのたわごとと思って水に流してくれ.
ヒヨコ君 まぁそこまでおっしゃるなら.
博士 んーでは気を取り直して,業の説明だが,よく「前世」とかいう言葉を聞くじゃろう.
ヒヨコ君 自分が生まれる前は何だったとかですか?
博士 そうそう,食うて寝てばっかりいるから前世は牛やったんちゃうかーとかな.
ヒヨコ君 博士,関西弁になってます.
博士 子供の頃の記憶に戻ると,つい,な.
ヒヨコ君 でもほんとに前世なんてあるのですか.
博士 それは分からん.業の感覚を分かってもらうためにあえて「前世」という概念を使わせてもらっただけじゃ.
ヒヨコ君 じゃぁ無いのですか.
博士 わし個人的には有るといってもいいし無いといってもいいと思っておる.ある見方をすると有るとも言えるし違った見方をすると無いとも言えるしな.
ヒヨコ君 そんなもんですか.
博士 まあ,これはまた別の機会に深く突っ込んで話すが,物事のとらえ方で,有るとか無いとか白黒はっきりとするような場合は以外に少ないのじゃ.
ヒヨコ君 はっきりして欲しいですけれどね.
博士 白黒はっきりした方が分かりやすいんじゃが,大体は灰色なのじゃ.議論の場では分かりやすくするためにわざと白黒はっきりさせてみたりするがな.
ヒヨコ君 大人ですね.
博士 まぁそれはさておき,「前世」が有るとして,よく「前世で悪いことしたから今その報いがきたのじゃ」とかいうじゃろ.
ヒヨコ君 逆に前世でいいことしたから今が幸せとか.今いいことしてたら天国にいけるとか.
博士 意外と古風な奴じゃな,ヒヨコ君は.まぁつまりそのように現在の自分の状態が,過去の出来事からのつながりの延長上にある,また今の出来事の延長上に未来の出来事があるとする考え方じゃな.
ヒヨコ君 それは理解できます.
博士 その時間のつながりの概念だけ理解していればよろしい.「前世」だとか「天国にいける」とかは適当なのであまり深く考えないように
ヒヨコ君 一日一善!!来世でも良い子になれますように!!
博士 だから人の話を聞けい!ここは「科学」の場であるからそういう人間くさい部分はできるだけ排斥するように.
ヒヨコ君 でも人間くさい話の方が面白いです.
博士 じゃぁこの壷を買えばその収益金が慈善事業ににまわっていいことをしたことになるからいい来世になるといわれれば壷を買うか?
ヒヨコ君 は,博士!あのときの詐欺師は博士だったんですか!
博士 ばかもん.「あの時」っていったい...さてはおぬし過去にそういう目にあっているな.
ヒヨコ君 うぅ...
博士 だから人間くさい話にとらわれすぎると怪しい信仰や,銭もうけ等のにおいがしてきてそれこそ訳分からんようになるぞ.
ヒヨコ君 分かりました.気をつけます.
博士 まぁ一般的に「業」というとこれまでに歩んできた道や背負ってきた宿命のような表現に用いられるが,ここではあくまで時間的な前後関係の結びつき,またはこの時間のつながりの概念だけ理解していればよい.
ヒヨコ君 はい.
博士 で,「時間のつながり」とくりゃあ,次は?
ヒヨコ君 「空間」ですか...
博士 よくできました.空間的にもつながりはあるじゃろう.
ヒヨコ君 例えば?
博士 それは前回説明したであろう.
ヒヨコ君 ...縁起ですか.
博士 そのとおり.空間的にもまわりと関係しあって存在しているという感覚じゃ.これが縁の説明じゃ.
ヒヨコ君 諸法無我といってもいいんですね.
博士 うむ.例えばバケツに水をはって,そこにインクを落としたとする.
ヒヨコ君 はい.
博士 するとどうなるか.
ヒヨコ君 落ちたしずくが模様を描きながら水面に広がっていく...
博士 何かの小説のフレーズのようじゃがその通りですな.
ヒヨコ君 交ざり合ったその軌跡がやさしくうごめき合いながら,やがて静かに終焉を迎える...
博士 こらこら,おまえは**小説家か!
ヒヨコ君 すみません.博士の出だしのノリの影響でついつい...
博士 まぁ表現は別として,しずくが模様を描いて,やがて均一に広がるということが分かればよい.
ヒヨコ君 はい.
博士 で,色の濃いインクが,薄いバケツの水に落ちたから,そこを起点(原因)としてインクが広がるという終点(結果)に向かうという因果関係が生じる.要は時間軸方向に因果関係が生じるわけじゃな.
ヒヨコ君 ふむふむ.
博士 また,濃いインクが回りの薄い水に浸透していくというようにまわりとの相互作用によって空間方向にも変化していく.
ヒヨコ君 そうですね.
博士 業と縁,すなわち時間軸方向の因果律空間軸方向の相互作用によってこの現象が成り立っているのじゃ.
ヒヨコ君 なるほど,諸行無常,諸法無我を別の見方でとらえたような感じがしますね.
博士 うむ.今はバケツの例えを用いたが,すべてはこのような世界の中にあると考えてよろしい.
ヒヨコ君 最初は出だしからどうなるものかと思いましたが,ようやく話がひき締まってきましたね.
博士 諸行無常,諸法無我,業と縁,というものの見方で大体の世界観というものが分かってきたと思うが.
ヒヨコ君 怪しい信仰でなく,科学であると言われた意味がよく分かってきました.
博士 うむうむ.で,今回はここまでにしておくが,さらに理解を深めるために次回はもう少し別の見方でこの世界観を考えてみることにしよう.
ヒヨコ君 はいっ!では,また次回

第四話 完
ホームへもどる.indexへもどる.