blink reflex (眼輪筋反射、瞬目反射)


    <目的>
    三叉神経を求心路、顔面神経を遠心路とする脳幹反射の神経伝導を検査すること
    で、三叉神経、顔面神経、脳幹などの異常を客観的に評価する。

    <対象>
       三叉神経、顔面神経を侵す種々の疾患
    多発性硬化症、血管障害など脳幹を侵す種々の疾患 など

  <方法>
    眼窩上神経(三叉神経)を電気刺激することにより引き起こされる眼輪筋の反射的
    な収縮を記録する。
       通常片側の眼窩上神経を刺激し両側の眼輪筋より記録する。
    耳前部で刺激した顔面神経の直接反応も記録し、末梢性の顔面神経障害の有無も
    調べる。

  <検査の実際>
    1.両側の眼輪筋に記録電極を設置する。(2ch記録)
     眼窩下縁正中やや外方に(-)、鼻根部または目尻に(+)の皿電極を付ける。
     Ch.1は右、Ch.2は左とする。
          MS20 ではプログラム画面で 16 を選ぶ。
     上が右、下が左となる。各4回ずつの記録が表示される。
     full scale 100ms、gain は 200μV/div でよい。
    2.眉間にアース電極をおく。(皿電極でよい。)
    3.眼窩上縁で眼窩上神経を刺激する。(-)は眼窩上切痕に、(+)はできるだけ外側
     におき、反対側への current spread が小さくなり、刺激アーチファクトが小
     さくなるようにする。
     通常は刺激対側では R1 は記録されないが、current spread があると対側にも
          R1 が出る。このようなときは刺激電極をずらしたり、刺激強度を調節したりす
          る。
    4.刺激強度は反応を見ながら最も反応の出やすい強度を選ぶ。
     R2 は不安定であるので、R1 が最も高振幅になるような強度におおまかに決め
          る。
    5.左右各々十分な時間間隔をおいて数回ずつ検査し、最短潜時を測定する。
     刺激側の R1、R2、対側の R2 の最短潜時を測定する。 
     superimpose させたりして検討する。  
    6.連続して行うと habituation のため反応が出にくくなる。
    7.測定が終了したら、耳前部で顔面神経を刺激し、直接反応を記録しておく。
     末梢の要素をスクリーニングするため。


                刺激側


                反対側


      (反射弓)
     R1 : 三叉神経→三叉神経脊髄路核→顔面神経核→顔面神経
       という oligosynaptic refrex である。
     R2 : 三叉神経→三叉神経脊髄路核→介在ニューロン→顔面神経核→顔面神経
                                          交差して対側顔面神経核へも行く。
                                            polysynaptic reflex
      正常では、
     刺激側 10-12ms の潜時で R1、30-35ms の潜時で R2 が出現する。
     反対側 R1 は出ないが、R2 が同じ潜時で出現する。
          (刺激の current spread で反対側でも R1 がでることがある。)
        R2 は多相性で 20-25ms 持続する。
          連続して刺激を加えていると habituation のため振幅が徐々に小さくなる。
  
  <結果の解釈>
         刺激側別の R1、R2 を検討し障害部位を推定する。
     たとえば、右顔面神経の障害では、右刺激の右の R1、R2 が遅延するが、左の
          R2 は正常である。 
 
     (注意)R2 は大脳半球の障害で変化し、睡眠や意識状態でも変化する。


  <正常値> Kimura による。
          顔面神経直接反応(刺激−記録間距離を 10cm とすると)
               :  平均 2.9 ms  (上限 4.1 ms )
                  左右差の上限 0.6 ms
          R1   :  平均 10.5 ms (上限 13.0 ms ) 
                  左右差の上限 1.2 ms
          R2   :  平均 30.5 ms (上限 41 ms ) 
                  左右差の上限 5 ms
                  刺激側別の左右差の上限 8 ms

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