2006年9月8日〜9日:佐渡温泉紀行 第3章


 遅ればせながら、8日(金曜日)は夏休みをもらったので、再び佐渡に行ってきました。これまでの佐渡行脚で、日帰り温泉施設は入り尽くしましたが、佐渡には温泉は数多くあり、まだ入浴したことのない温泉があります。立ち寄り湯を受け付けていない温泉が残ってしまっているのですが、今回はそのうち最も魅力ある温泉である「佐和田温泉」に宿泊するのが目的です。幸い1人での宿泊も受け付けており、料金も手頃なので、インターネット予約しました。


 新潟港発9時20分のフェリーで出発です。券売機で2等チケットを購入。2190円でした。原油値上げのため、、「燃料油価格変動調整金」が加算され、料金が少し高くなっています。この春は2060円でしたから130円加算されていることになります。原油価格が下がれば廃止とのことですが、当分無理でしょうね。
 銅鑼の音とともに出航です。信濃川上で180度方向転換して佐渡へと向かいます。毎度思うのですが、船上から見る新潟の町並みは新鮮であり、風情があります。港町新潟の魅力を再発見できます。
 2等船室は団体客でうるさそうでしたので、3階の椅子席に席を取りました。天気に恵まれ、暑すぎることもなく気持ちよい船旅です。今回のフェリーは「おおさど丸」。フラッグシップの「おけさ丸」に比べるとやや小さく、古いのですが、11,086トンの大型船です。カモメの見送りを受けながら新潟港を後にしました。
 新潟港外に出ると海の色が群青色に変わります。新潟の町並みが遠くに消え、海を眺めならひとときを過ごすと、いつしか佐渡の島影か迫り、姫崎燈台を過ぎ、両津湾内に入るともうすぐ到着です。船から大佐渡の山並みを臨むと佐渡の大きさが実感されます。
 揺れもなく、2時間半の船旅は快適でした。両津港に入港する直前にジェットフォイルとすれ違いました。
 

 11時50分、定刻に両津港に到着しました。まずは昼食です。佐渡汽船ターミナル3階の食堂で、ちょっと奮発して「鮮魚定食1500円」をいただきました。昼時で賑わっていましたが、大して待つこともなくテーブルに運ばれてきました。お刺身にフライなど十分な内容でした。ただし、ご飯は美味しくなかったです。

 その後レンタカー屋さんへ向かいました。佐渡島内の移動はバスか車しかありませんから、今回もレンタカーを借りることにしました。それもなるべく安上がりにしたいため、昨年も利用した某店から一番安価な軽自動車を24時間借りることにしました。今回の車種は、日産のモコ。カーナビまで付いてました。室内も予想外に広く、私が毎日乗っている2000ccの普通車に比べても狭さは苦になりません。余談ですがこの店の受付のお姉さん方は美人です。

 さて、宿泊は佐和田温泉なのですが、それまでどこを巡るか船内で思案しました。両津では、加茂湖温泉に行っていないので、電話で問い合わせてみましたが、入浴のみは不可とのことで断られました。椎崎温泉の「佐渡グリーンホテルきらくの露天風呂(朱鷺の舞湯)」を紹介されましたが、前回も、前々回も行ってますのでやめにして、住吉温泉の「寿月館」に行くことにしました。しかし、行ってみると残念ながら湯を落としていて入浴できないとのこと。裏の「両津健康保養センター」に行ってくれと言われました。そこは前々回行っているのでやめ。うーん、今回は出だしからついてないなあ・・。とため息をつきました。

 そこで、これまで懸案になっていたことを片づけることにしました。まず、「湯之沢温泉」です。道路地図には載っているのに、ネットやガイドブックを調べても詳しい情報がない温泉です。
 佐渡の観光協会のホームページには「湯之沢温泉旅館」と出ています。以前に旧金井町の日帰り温泉「金北の里」に行ったとき、すぐ近くに看板を見た記憶がありました。今回改めて行ってみましたら、確かに「金北の里」のすぐ手前にひっそりとたたずんでいました。
 看板は「閑静で優雅な湯の宿・湯之沢」となっていて、湯之沢に続く「温泉」の二文字がペンキで消されていました。温泉なのかと尋ねてみたら、鉱泉を沸かしているとのことでした。入浴のみは不可とのことで泉質を確認することはできませんでした。県の統計にも出てませんから、温泉の規定に当たらないのでしょう。昔は鉱泉宿として繁盛していたんでしょうが、温泉開発が進んで佐渡にもたくさんの温泉ができましたから寂れてしまったのでしょうか。


 次に向かったのは「桃華園」です。ネットでたまたま存在を知り、塩釜風呂が名物だそうですが、これまでに聞いたこともなかったので、自分の目で確かめたかったのです。
 念のため電話で入浴可であることを確認して向かいました。金井から大佐渡スカイラインに向かう道路を数分登り、人家が途絶え少しすると右手に見えます。カーナビにも登録されていました。
 建物は古めかしい木造で、右が民宿棟、左が塩釜風呂棟となっていて、壁に「塩釜風呂」と大書されていて、煙突が建っています。建物の前は大きな広場となっています。道路沿いには山羊が1匹、玄関前に犬小屋があって、犬が1匹いました。

 どこが入り口かわからなかったので、玄関風の入り口に行ってみました。靴が雑然と脱がれていて、中を覗くと生活臭がたっぷり。廊下に本棚が並び、本がぎっしり並んでいました。人の話し声が聞こえるので声を掛けると、女将が奥から出てきました。「さっきの電話の方ですね」と、塩釜風呂へ案内してくれました。

 玄関は民宿とは別になっています。塩釜風呂棟にもちゃんと玄関があり、かなり古くなっていますが、鍵付きの下足箱までありました。受付もありますが、今案内してもらって来たわけですから当然誰もいません。電話に張り紙がしてあって、「ご来店のお客様へ。只今民宿におります。ご用の方は内線11を呼び出して下さい」とありました。
 女将に促されて中に入ると、休憩室で待っていてくれとのことで、数分待たされました。風呂の準備をしていてくれたようです。「まだ温度が43度にしか上がっていないので、ゆっくり入ってくださいね。奥の方が熱いと思いますから奥に寝て下さい」と温度が低いことを気にしている様子でした。
 料金1000円を支払い、タオルと浴衣を受け取りました。営業時間を聞いてみましたら、10時から夜の9時までですが、8時までには入ってもらいたいそうです。島の人でも入浴だけ利用しに来る人が多くいるそうです。
 その後浴室に案内してくれて、釜風呂の入り方や効能を詳しく教えてくれました。「サウナに強い人は2時間くらい入っている人もいますよ」とのこと。まず普通の風呂に入浴し、その後釜風呂に入るのだそうです。「あとでお茶を用意しておきますが、熱いのがいいですか、冷たいのがいいですか」とあたたかいお言葉。冷たいのをお願いしました。

 浴室は男女別々にあり、男風呂が手前にあり、奥に女風呂があって、カーテンで仕切られています。まず普通の浴槽に入浴して汗を流します。浴室にはジェット付きのタイル張りの浴槽があります。温泉ではないですが、これはこれで結構いい湯でした。人工温泉のようです。シャワー付き洗い場もあり、固形石鹸とシャンプー、リンスが置いてありました。窓はありますが、庭先が見えるだけで景色は良くありません。

 浴室のすぐ向かいに釜風呂があります。小さな木のドアが入り口になっていて、「長岡かまぶろ温泉」とよく似ています。岩塩の上にムシロが敷いてあり、寝て入浴します。奥を使ってくれと女将が言っていましたが、その場所には水をまいていてくれました。
 初めは温かく感じませんでしたが、ボイラーの音が眠りに誘い、20分ほど寝ていると、汗がどんどん出てきました。通常の高温サウナより汗の出がいいように思いました。

 汗だくになって外に出ると、女将がお茶を持って来たところで、「汗が出ましたか」と声を掛けてくれました。たくさん汗が出たと答えましたら、安心したようで喜んでくれました。「お茶をテーブルの上に準備しておいたのでゆっくりしてくださいね」と言い残して女将は帰っていきました。風呂で汗を流し、休憩室へ。テーブルに古ぼけたポットに入った冷たい麦茶とコップが用意してありました。冷たい麦茶は美味しかったです。
 少し休んで再度釜風呂へ。汗がますます出てきます。そして浴室で汗を流して休憩。こういう低温サウナは他にもよくあるのですが、わざわざ佐渡の地で汗を流していると感慨もひとしおです。他に客の来る気配もなく、私だけのためにボイラーを焚いてもらったようで、もったいない話です。1000円でゆっくりできることを考えると穴場かも知れません。結局2時間近くも過ごしてしまいました。


 外に出ると快晴の空。大佐渡の山並みが大変きれいで、天気に誘われて大佐渡スカイラインを登ることにしました。
 火照った体を冷ますためエアコンを付けていると、坂道がきつくなるとスピードが出ません。だんだん急坂になり、アクセルを全開にしても30km程度しか出ません。仕方なくエアコンを切って坂道を登りました。こうなると軽自動車はきついですね。
 自衛隊基地を過ぎ、息も絶え絶えに坂道を登って、ようやくのことで白雲台の展望台に到着しました。ちょうど観光バスの団体さんが来ていたので、バスガイドさんの名調子による説明を一緒に聞いていました。
 景色は最高。佐渡全体が見回せて、地図同様の佐渡の形をたどることができます。小佐渡山脈の山越に、弥彦山・角田山が見え、右手奥には米山も見えます。こんなに天候に恵まれて、日頃の行いが良いせいなんだろうなと勝手に考えていました。

 この絶景を後にするのは心苦しかったのですが、先があります。登りと違って相川への下り道は快適でしたが、クネクネ道に車酔いしてしまいました。ジェンキンスさんが勤務している佐渡金山に寄ろうかとも思いましたが、車酔いで気分がすぐれず、通過しました。佐渡奉行所を過ぎ、相川に出て、さらに佐和田に向かいました。

 時刻は4時半。チェックインには少し早いので、国道沿いにあった蔦屋書店を覗いてみました。佐渡にある店だから大したことないだろうと思って入ったのですが、専門書の品揃えの多さにビックリしました。新潟市内のどの本屋にも負けないような品揃えに感嘆しました。かなりマニアックな本が多数置いてあり、売れるんだろうかと勝手に心配してました。
 佐和田と金井の間の国道沿いには他にも大型店や飲食店が軒を並べ、新潟市内にあるチェーン店の大方はここにもあります。大したものですね。


 さて5時を過ぎ、「佐和田温泉・入海」にチェックインしました。部屋は1階で、窓の外には道路を隔てて真野湾が広がっています。海水浴場にもなっているようですが、海水浴客はいません。夕暮れ迫る海の風景は見ているだけで癒されます。海に面しない部屋の料金は安いのですが、海側にして良かったと感じました。

 夕食は6時半にお願いし、それまでの間、温泉に浸かることにしました。浴室には大浴槽があるのみですが、木枠に囲まれた長方形の浴槽に黒湯が満ちていました。先客がちょうど帰るところで、後は独り占めでした。
 湯をすくってみると茶褐色ですが、浴槽の湯はコーラ色で、透明度は10〜15cm程度しかありません。湯は循環されていますが、源泉の蛇口もあって、非加熱源泉をたっぷり注ぐこともできます。その源泉を飲んでみましたら、甘く、モール泉特有の芳香が感じられました。泉質は含食塩重曹泉と掲示してありましたが、現在の呼び方ではナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉となるはずです。源泉温度は21℃、PH7.9です。成分表の掲示内容は不十分ですが、主な成分(イオン濃度mg/kg)を列記しますと、K 52.9、Na 393.1、NH4 9.53、Ca 14.3、Mg 1.1、Fe 0.07、Mn 0.02、Al 0.46、Cl 248.2、SO4 8.2、HCO3 772.59、メタ珪酸 112、メタ硼酸 20.7、などで、蒸発残留物合計は1460mg/kgと書いてありました。源泉は加熱・循環され、塩素系消毒剤も使用しているとのことですが、カルキ臭いことはありません。肌はツルツルとなり、肌に優しく、浴感はすばらしいです。
 また、泉質以上のここの魅力は、畳敷きの洗い場です。畳ですからソフトな感じであり、それが心地よいのですが、それ以上に畳の上でお湯を浴びるという感激を味わえます。畳の上で体を洗ったり、お湯を浴びたりなんて日常ではできるはずがありませんから、まさに大名気分です。非日常を味わうことが旅の喜びのひとつであり、この点この浴室はよく考えられています。きれいに掃除されていますし、本当に気持ちよく入浴できます。

 さて、夕食の時間です。大変チャーミングな仲居さんが料理を運んでくれました。料理は網元料理(料理10品)というコースを注文したのですが、十分すぎるほどの量です。お造りのほか、イカソーメン、サザエの壺焼き、オコゼの唐揚げ、アイネメの焼き物と煮物などなど、食べきれないかと思いましたが、ビールが進んで、料理も全部食べ尽くしました。ただし、何せひとりですから、話し相手もなく、テレビを見ながらの寂しい食事ではありました。

 食後に入浴して、床につき、明け方までぐっすり。夜明けの海を眺めていると心和みます。朝風呂を浴びに浴室に行くと、先客がゆったりとされていました。ツルスベの黒湯はやっぱりすばらしいです。

 朝食は大広間に用意されていました。お座敷なのに椅子席でした。宿泊客が数組しかないので、ちょっと寂しい感がありましたが、朝食も十分すぎる内容で、最後にコーヒーまで出てきのには感激しました。また、昨夜とは別の仲居さんでしたが、清楚な美人で、これまた感激でした。感激ばかりしている私は、日頃どんな生活をしてるんでしょうね。

 部屋でひと休みしてチェックアウトしましたが、料金以上に満足できる宿でした。もっと安い部屋も食事もありますし、食事なしにもできます。いろいろな料金設定で利用できます。何より1人利用可というのはありがたく、平日は低料金での宿泊が可能ですのでビジネス利用の客も多いようです。
 泉質の良さ、浴室の良さを鑑みて、景色だけが売り物の循環湯の大型温泉旅館よりは数倍味わい深いと思います。小規模で、設備的には劣りますが、そういうことにこだわらない人たちには自信を持ってお勧めできる旅館です。


 本当ならさらに温泉巡りをするところですが、良質なモール泉に十分満足し、その余韻に浸りたかったため、立ち寄り湯はせずに帰ることにしました。時間が多少余ったので、新穂の朱鷺保護センターに立ち寄り、朱鷺見物をした後両津に戻りました。


 両津港でレンタカーを返しましたが、料金は、118km走行し、総額7330円でした。さすがに軽自動車だと安くつきます。

 帰りもフェリーにしようかと思いましたが、少々疲れを感じ、思い切ってジェットフォイルにしました。6090円と、これまた「燃料油価格変動調整金」が加算され、高くなっていますが、快適な船旅でした。
 両津出航直後にフェリーとすれ違いましたが、考えてみたらそのフェリーは昨日乗っていたものであり、昨日すれ違ったジェットフォイルが今乗っているものと言うことです。佐渡滞在は24時間弱でした。


 60分の船旅で、新潟港着。これで、今回の佐渡行脚のおしまいです。駐車料金は佐渡の宿泊利用による割引があって、総額2800円でした。もっと安いといいのにね。

 佐渡の温泉もほとんど入り尽くしました。残る温泉も少ししかありません。後は立ち寄り入浴できないところなので、機会を改めて宿泊利用したいと考えています。