旅の手帖2003年4月号「にいがたがっこう」

 
 「自然の恵みでヒーリング・源泉にこだわる厳選の旅」


はじめに

 海あり山あり川あり、自然に恵まれた新潟県には、趣ある温泉が数多くあります。火山性の温泉は少数ですが、瀬波温泉や松之山温泉のように火山がないのに熱湯が噴き出ているところがあります。また、かつて日本最大の油田地帯であった新潟県では、石油や天然ガスの掘削が盛んに行われ、その副産物として、数多くの個性的な温泉が開発されました。出湯温泉や栃尾又温泉のように1200年以上の歴史を誇る温泉もありますし、昨今の温泉ブームで開発された温泉もあります。これらをすべて紹介するわけにはいきませんので、源泉の本来の味わいを十分に堪能できて、気軽に日帰り利用が可能な温泉を紹介します。

下越地方の温泉

村上市の海岸部にある瀬波温泉は石油開発の副産物として生まれました。温泉街には多数の温泉櫓が見られ、湯気がたなびく様は風情豊かです。日帰り温泉施設として、「湯元・龍泉」は湯量豊富で、広大な露天風呂が魅力です。また、「ゆ処そば処・磐舟」の浴室は高台にあり、日本海に沈む夕日を見ながらの入浴は格別です。
 新潟の奥座敷として賑わう月岡温泉は、日本有数の硫化水素量を誇り、温泉街には硫化水素臭が漂います。エメラルドグリーンに輝く源泉は神秘的ですらあります。日帰り温泉施設として、「共同浴場・美人の泉」、「ほうづきの里」がありますが、多くの旅館で立ち寄り湯が可能です。大型旅館の大型浴槽よりも、小規模旅館の小型浴槽が源泉の味わいが深くお勧めです。
 多宝温泉「だいろの湯」は、岩室温泉のはずれに新しく掘削された温泉で、日帰り専門です。月岡温泉に匹敵するほどの硫化水素量を有し、源泉100%の掛け流しが魅力です。温度調整も熱交換で行い、生の源泉の味わいを堪能できます。

中越地方の温泉

川端康成の「雪国」の舞台となり、スキーリゾートとして有名な越後湯沢温泉は、越後湯沢駅周辺に温泉街があり、歩いての温泉巡りも楽しめます。このうち「湯元共同浴場 山の湯」が源泉の味わいが深くお勧めです。
 奥只見の玄関口の湯之谷村には、葎沢温泉、芋川温泉、折立温泉、大湯温泉、栃尾又温泉、駒の湯温泉、銀山平温泉と数多くの温泉があり、それぞれに違った魅力がありますが、栃尾又温泉の「栃尾又霊泉の湯」のぬる湯は、精神安定効果があり、ストレスで疲れた心身を癒すに最適です。その奥の、駒の湯温泉は、ランプの宿として親しまれていますが、湯量豊富な掛け流しは気分爽快です。

上越地方の温泉

 草津温泉、有馬温泉と並んで日本三大薬湯に数えられる松之山温泉には、いくつかの源泉がありますが、石油臭を伴う高温の食塩泉は、硼酸の含有量も多く、まさに薬湯と呼ぶにふさわしいものです。旅館の立ち寄り利用が可能ですが、日帰り入浴施設として、温泉街の中心に「松之山温泉センター鷹の湯」、温泉街手前に「ナステビュウ湯の山」があります。また、少し離れた兎口地区に、「兎口露天風呂・翠の湯」(冬季閉鎖)があり、鳥のさえずりを聞き、森林浴しながらの入浴は格別です。
 新潟を代表する火山である妙高山周辺には多くの温泉が点在し、赤倉温泉はスキーのメッカとして有名です。一番標高の高い燕温泉には、「黄金の湯」、「河原の湯」という無料の露天風呂(冬季閉鎖)があり、大自然の中の入浴を気軽に楽しむことができます。ただし、「黄金の湯」は男女の別がありますが、「河原の湯」は完全な混浴です。ここは羞恥心を忘れ、自然の恵みを楽しみましょう。

おわりに

 そのほかにも佐渡を含め、魅力的な温泉は多数ありますが、限られた誌面では書き切れません。新鮮な源泉を五感を総動員して味わうのが温泉巡りの醍醐味ですが、温泉の置かれた環境、自然も重要な意味を持ちます。豊かな自然に恵まれた新潟の温泉を是非お楽しみ下さい。