東京交響楽団第145回新潟定期演奏会
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2026年3月29日(日)17:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
指揮:原田慶太楼
カウンターテナー:彌勒忠史
合唱:にいがた東響コーラス(合唱指揮:根本卓也)
コンサートマスター:小川ニキティングレブ
 
コープランド:アメリカの古い歌 [第1集]
 T.船乗りたちの踊り
 U.いかさま師
 V.遠い昔に
 W.素直さの賜物
 X.私は自分に猫を買いました(子供の歌)

バーンスタイン:チチェスター詩篇

(休憩20分)

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 ニ短調 op.47
  

 

 今日は、2025年度のシーズン最後の東響新潟定期演奏会です。今年度も例年同様に変則的な日程となり、前回の昨年11月16日に開催された第144回新潟定期演奏会から4か月以上も間が空いてしまい、随分と久しぶりの開催になりました。
 今回は、昨夜のサントリーホールでの第738回定期演奏会と同じプログラムですが、2021年4月に東響正指揮者に就任し、新潟でも数々の演奏会で指揮をされた原田慶太楼さんの、東響正指揮者としての最後の記念すべき演奏会です。

 プログラムの前半は、アメリカで学び、アメリカを拠点に活躍している原田さんが得意とする20世紀のアメリカの作品で、コープランドの「アメリカの古い歌」とバーンスタインの「チチェスター詩篇」が演奏されます。
 にいがた東響コーラスが出演するほか、新潟市秋葉区文化会館のレジデンス合唱団フォリエの指揮者で、新潟でもおなじみの彌勒忠史さんとの共演も楽しみです。そして後半は、ショスタコーヴィチの交響曲第5番です。

 前半の2曲は、今回初めて聴く曲です。東響新潟定期演奏会でしか聴くことのできない曲であり、私の残された人生を考えますと二度と聴く機会はないと思われますので、この演奏会は貴重です。
 後半のショスタコーヴィチの5番は有名曲ですので、何度か聴く機会がありましたが、東響新潟定期演奏会では、2000年6月の第7回新潟定期演奏会(指揮:大友直人)、2019年5月の第113回新潟定期演奏会(指揮:ノット)以来、7年振り3回目となります。

 昨夜のサントリー定期は、ニコニコ東京交響楽団で生配信(タイムシフト配信で1週間視聴可能、ただしバーンスタインは著作権の問題でタイムシフト配信なし)されましたので、視聴された方もあるかも知れません。
 私も初めて聴く曲の予習のために生配信を視聴しましたが、コープランドは、いきなり合唱団が踊りだしてびっくりし、バーンスタインは、最初はミュージカルかと思わせて、カウンターテナーで酔わせ、最後はしっとりと、荘厳に歌われる美しい音楽に、汚れた私の心が浄化されるようで、これをりゅーとぴあで聴けたら最高だろうなあと思いました。
 合唱団は、コープランドは英語、バーンスタインはヘブライ語の歌詞を全て暗譜で歌っていましたが、新潟ではどうなるでしょうか。
 もちろん後半のショスタコーヴィチの演奏も見事なものであり、配信でも十分楽しめましたが、生で聴いたら感動も百倍と思われ、期待は高まるばかりでした。

 ということで、今日を迎えました。今週末は好天に恵まれて、気温も上がって、春の到来が実感されました。今日も朝から晴れ渡り、春の日差しが心地良く感じられ、絶好の行楽日和となりました。

 本公演に先立ち、12時から恒例のロビーコンサートが開催されました。今回は弦楽四重奏により、後半のプログラムに合わせてだと思いますが、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第3番が演奏されました。是非とも聴きたかったのですが、諸般の事情により聴きに行くことができず残念でした。

 所用がありましたので、早めに家を出て白山公園駐車場に車をとめ、白山神社を通りますと、梅の花が満開になっていました。
 所用を済ませ、本日で営業を中止する本町通りの「いずみ湯」に別れを告げました。またひとつ銭湯が消えてしまうのは残念ですね。

 歩道橋を渡って、りゅーとぴあの裏に出て、東玄関より館内に入りますと、スタジオAでの Duo KaKao のリサイタルが終演したところで、お二人がロビーに出て来て挨拶を受けていました。聴けなくて残念でした。
 インフォメーションで某コンサートのチケットを買ったりしていましたら、昔お世話になったかつての上司や、現在の職場の同僚に出会ったりして、こういう日もあるんだなあと驚きました。

 開場とともに入場して席に着き、この原稿を書いていますと、ほどなくして榎本さんがステージに出てきて、廣岡団長を迎えて恒例のプレトークが始まりました。
 ショスタコーヴィチの交響曲第5番の作曲当時の政治状況の解説などがありました。恒例の団員紹介コーナーでは、ハープの渡辺沙羅さんが紹介されました。そして正指揮者としては今日が最後の原田さんの紹介がありました。
 質問コーナーでは、弦楽器パートの席順についての話があり、主席、フォアシュピーラー、トゥッティに分かれることの説明がありました。
 また、引退を考える場面についての質問があり、東響の場合は、60歳定年で、65歳まで延長できるそうですが、音楽家としては、引退ということは、音楽を辞めるのではなく、音楽への関わり方が変わるということだそうでした。ちなみに榎本さんも今年で定年とか。

 プレトークが終わり、ステージを眺めますと、左にハープが2台にチェレスタ、そして様々な打楽器群が並び、右側の管楽器席とコントラバスの間にはピアノが設置されていました。
 開演時間が近付くにつれて次第に客席は埋まってきましたが、PブロックとA・EブロックのPブロック寄りが合唱団のために空けられていたことを鑑みますと、客の入りとしましては、いつも並みでしょうか。
 いつもは私の席のすぐ近くに廣岡団長が座られるのですが、今日は離れた席に榎本さんとともに着かれました。

 開演時間の少し前、コントラバスが音出しをしている中に、静かに合唱団が入場してPブロックに着席し、コントラバスが退場しました。合唱団はPブロックの左にソプラノ、中央にテノール・バス、右にアルトが並びました。
 開演時間とともに拍手の中に団員が入場し、全員揃うまで起立して待ち、最後に今日のコンマスのニキティンさんが入場して大きな拍手が贈られ、チューニングとなりました。
 オケの配置は通常型で、16型(16-14-12-10-8)です。コンマス横は安心の田尻さんです。管はいつもの顔ぶれでしたが、フルートは見慣れない人でした。後で調べてみましたら研究員として入団した元山形交響楽団首席の知久翔さんでした。

 原田さんが登場して、合唱団が起立し、最初はコープランドの「アメリカの古い歌[第1集]」です。この曲集は、19世紀のアメリカの様々な音楽を歌曲集としてまとめたものです。
 第1曲「船乗りたちの踊り」は、オケとともに力強い男声合唱に女声合唱が加わって始まりました。美しい混声合唱でこのままいくのかと思わせましたが、突然曲調が変わるとともに、船乗りが躍るように、体を揺らしながらの楽しげな合唱となりました。
 私は昨夜の定期演奏会を生配信で見て知っていましたので驚きませんでしたが、今日来られた皆さんはびっくりしたのではないでしょうか。このパフォーマンスは東京だけかと思っていましたが、新潟でも踊ってくれて良かったです。
 緩急のメリハリがある楽しい曲で、身体を揺らせてリズムを取って軽快に歌い、緩徐部ではゆったりと、しかし力強く歌い、最後は美しいハーモニーで終わりました。
 第2曲「いかさま師」は、遠い昔に、どこかで聴いたことがあるようなメロディで始まり、合唱団も楽しく歌いました。軽快に、力強くリズムを刻み、懐かしさを感じながら楽しく聴きました。
 第3曲「遠い昔に」は、美しいフルートとともに、ゆったりと合唱が始まりました。学校の唱歌のように、耳に良くなじみ、懐かしさを感じさせる曲でした。
 初めて聴くはずなのに、遠い若き時代に、聴いたり歌ったりしたことがあるような親しみを感じました。情感豊かに、しっとりと終わりました。フルートが良い味付けをしてくれたのも良かったです。
 第4曲「素直さの賜物」は、明るく爽やかに始まりました。短めでしたが、明るく穏やかな美しい曲で、合唱とオケとが柔らかく融合し、心に染みました。
 第5曲「私は自分に猫を買いました」は、トロンボーンのひと吹きとともに歌いだしました。体を揺らしながら楽しそうに、ちょっとふざけたように、ユーモアたっぷりに歌いました。馬、牛、豚、ガチョウ、アヒルなど、曲名の猫以外の様々な動物が出てきて、コミカルで、いかにも子供が喜びそうな曲を面白おかしく歌いました。
 ニヤリとさせて、気分も晴れやかに曲が終わり、大きな拍手が贈られました。カーテンコールでは合唱団に大きな拍手が贈られて好演を讃えました。

 ここで管・打楽器の入れ替わりがあり、木管群が退いて、金管や様々な打楽器群が増強され、ハープ2台もスタンバイしました。指揮台の左に独唱者用の席が設けられ、次はバーンスタインの「チチェスター詩篇」です。
 この曲は、イギリス南部のチチェスター大聖堂での音楽祭のために委嘱された作品で、ヘブライ語で書かれた旧約聖書の詩篇をテキストとしているそうです。

 カンターテナーの弥勒さんと原田さんが登場し、合唱団が立ち上がり、弥勒さんは椅子に座って演奏が始まりました。
 第1楽章は、打楽器の一撃とともに合唱が始まり、荘厳に激しく音楽が進むかと思いきや、いきなりウエスト・サイド物語のようなミュージカル調の音楽に変わって驚嘆しました。宗教曲とは思えない音楽は、まさにバーンスタインの世界でした。
 激しいリズムとともに力強く合唱し、その迫力に圧倒されました。束の間の静けさが訪れるも、再び力強く歌って終わりました。
 第2楽章は、弥勒さんが起立して始まりました。ハープとともに、静かにカウンターテナーが歌い、切々と訴えるような、美しい歌声に魅了されました。
 合唱の清らかな歌声が加わり、透き通るような清廉な合唱とカウンターテナーとが融合し、感動的な心に染み入る音楽を創り出しましたが、突然激しく打楽器が鳴り、荒々しく合唱が歌いました。
 しかし、カウンタテナーがハープとともに美しく歌い、再び感動的な音楽を生み出しました。弥勒さんが着席し、激しく太鼓が鳴りました。
 第3楽章は、嘆くような弦楽で始まりました。不安な空気の中にトランペットが悲しげに歌い、嘆き悲しむ弦楽が続きました。静寂の中に、ハープとともに合唱団が安らかに歌い、弦楽合奏と合唱とが作り出す美しいハーモニーにうっとりとしました。合唱は限りなく清廉で美しく、チェロの四重奏が優しく響きました。
 音量を極限まで抑えたトランペットともに、しっとりとホールに響き渡る最後の荘厳で清らかな合唱には息を呑みました。「アーメン」と消え入るように静かに歌って、うっとりと聴き入り、安らぎの静けさとともに曲は終わりました。
 10秒以上の無音の静寂の後に、ゆっくりと原田さんが手を下ろし、大きな拍手が沸き起こり、ブラボーの声も聞かれました。
 第2楽章での弥勒さんのカウンターテナーも素晴らしかったですが、出番はそこだけで、やはり合唱団の頑張りを賞賛すべきでしょう。

 最初のコープランドの「アメリカの歌」は英語の歌詞でしたが、「チチェスター詩篇」はヘブライ語の歌詞です。この2曲をすべて暗譜で歌ったにいがた東響コーラスの皆さんを賞賛したいと思います。
 もちろん曲を作り上げた原田さん、合唱指揮の根本さん、そして見事な演奏をしてくれた東響の皆さんにもブラボーを贈りたいと思います。

 カーテンコールが何度も繰り返されて前半のプログラムが終わりましたが、楽しく、そして感動的なプログラムでした。
 コープランドの「アメリカの古い歌」での踊りながらの歌唱は、驚かされるとともに、聴く側の心もウキウキでした。合唱の質というより、楽しく歌うことが肝の曲なんだと思います。
 そして、最初はこんな宗教曲なんてあるのかと思わせながらも、最後はしっとりと感動の世界に誘ってくれたバーンスタインの「チチェスター詩篇」は圧巻でした。
 これを聴けただけでも今日の収穫と思えるものでした。おそらく二度と生の演奏を聴くことはないでしょうから、今日は貴重な演奏会だったと言えましょう。

 にいがた東響コーラスは、昨夜の東響コーラスに勝るとも劣らない素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれました。新潟もたいしたものだとうれしく思いました。

 休憩時間には、テューバや打楽器の皆さん、チェレスタなどが音出しをして位置調整したりしていましたが、ピアノの右横にもう1台のチェレスタがありました。

 休憩時間を終えて、後半はショスタコーヴィチの交響曲第5番です。合唱団席がぽっかりと空きましたが、ハープ2台に多彩な打楽器群、チェレスタが左右に2台、そしてピアノが並び、ステージいっぱいの16型のフルオーケストラは視覚的にも壮観です。原田さんが登場して演奏が始まりました。 
 第1楽章は、激しい低弦の叫びで始まりました。弦が悲しく嘆き、緊張感と悲しい音楽に心も暗くなります。悲しい感情が次第に高まり、美しい弦楽アンサンブルが切なく歌い、悲しみの中に、美しいフルートが歌いました。
 押し殺された暗闇にピアノが鳴り響き、金管が咆哮して、疾走するようにリズムを刻みました。エネルギーを高めて、壮大にリズムを刻み、力強く行進しました。戦いが始まり、銃撃音が鳴り響き、激しさと緊迫感を高めて頂点となりました。
 その後には静けさが訪れますが、フルートを始めとし、菅のソロが素晴しかったです。そして静けさの中に、コンマスのソロ、右側のチェレスタが悲しげに美しく響いて、しっとりと終わりました。
 第2楽章は、激しい低弦の咆哮とともに始まり、ホルンが鳴り、木管群が受け継ぎました。どこか狂気的な雰囲気があるワルツを力強く踊りました。そして、ハープとコンマスソロが美しく絡み合いました、管が滑稽に歌い、狂ったようなワルツを踊り、突然スピードを落として、ゆっくりと終わりました。
 第3楽章は、悲しみに満ちた弦楽アンサンブルが、しっとりと美しく響き、嘆きの音楽が心に染み入りました。ハープが悲しく響き、フルート二重奏が切なく歌いました。重苦しい静けさから朝日が昇るように高まりを見せるも、再び静けさが訪れました。
 静寂の中に繊細なヴァイオリンのトレモロとともにオーボエがしっとりと歌い、クラリネットが嘆き悲しみ、消え入るような繊細な弦とともにフルートが歌い、鉄琴(グロッケンシュピール)が響き、コントラファゴットの重低音が鳴り渡り、悲しみは次第に大きくなって感情の高まりを見せました。その悲しみが頂点となって、木琴(シロフォン)とともに嘆き、弦が泣き叫び、押し殺した静けさの中にハープが切なく歌い、左側のチェレスタがしんみりと響いて終わりました。
 アタッカでティンパニの連打と金管の咆哮とともに、激しく第4楽章が始まりました。蒸気機関車がスピードを上げて疾走するように、激しくリズムを刻み続け、どんどんとスピードアップして爆発しました。
 静けさが訪れて、悲しく弦が歌い、管が呼応し合いながら悲しみに沈み、暗闇の中を彷徨いました。ハープとともに朝日が昇るように、次第に明るさが訪れて、パワーを高めました。
 大太鼓の合図で頂点へと駆け上がり、激しくリズムを刻み続ける弦、叫び続ける管。原田さんはスピードアップはせずに、しっかりと盛り上げました。そしてティンパニが連打され、最後に大太鼓が8発打ち鳴らされて、大きな興奮とともに終演となりました。

 ホールに感動と興奮をもたらして、割れんばかりの拍手とブラボーが贈られました。カーテンコールが何度も繰り返されて、素晴らしい演奏を讃えました。
 今シーズンの最後を飾るとともに、原田さんの東京交響楽団正指揮者としての最後の演奏会に相応しい見事な演奏だったと思います。
 管楽器の各パートとも見事なパフォーマンスを発揮し、特にフルートのソロが美しかったです。ピアノ奏者はいつの間にか移動して、左右のチェレスタを弾いていました。
 そして、繊細な弱音から大音量まで、高水準な弦楽アンサンブルの美しさにも感動しました。この曲の場合、ヴァイオリン群とヴィオラ、チェロ、コントラバスの低弦群とが呼応する場面が多く、対向配置でなくて通常の配置の方が演奏効果が高まって良いんだなあなどと、素人ながらに感じました。

 原田さん、そして原田さんの指揮に見事に応えて抜群のパフォーマンスを発揮した東響のメンバーを賞賛したいと思います。そして、前半で頑張ってくれたにいがた東響コーラスの皆さんに、あらためてブラボーを贈りたいと思います。

 いい音楽を聴いた満足感とともにホールを出て、開花までもう少しかかりそうな桜の木々を眺めながら駐車場へと向かいました。

 来年度も定期会員の更新をしましたが、次回の定期演奏会は6月28日までお預けです。次の定期の指揮者は、注目の沖澤のどかさんで、にいがた東響コーラスのほか、カウンターテナー続きで、今度は藤木大地さんが出演されます。素晴らしい演奏を聴けることを楽しみにしたいと思います。
 また、定期演奏会の前月の5月31日には、特別演奏会としてジブリの音楽が演奏されます。若者やファミリー層などの集客に期待し、東京交響楽団の素晴らしさを知ってもらう機会になると良いですね。
  

(客席:2階C*-**、S席:定期会員:¥6100)