第7回 ドルチェコンサート 〜弦楽アンサンブルの饗宴〜
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2022年8月11日(木) 14:00 新潟市音楽文化会館
ヴァイオリン指導者:鈴木和子
(門下卒業生)
ヴァイオリン:佐々木友子、増永花恵、徳永希和子、佐藤直子、山下はる香、高橋百合、飯田輝海
ヴィオラ:尾崎望、小林英昭(指揮) 
(賛助出演)
ヴィオラ:増永雄記 チェロ:根津要、渋谷陽子 コントラバス:別森麗 チェンバロ:村山和子 
ヴァイオリン:尾崎晴野(研修生)
アンサンブル・フィーデル(ワーグナーのみ)
 

ラター:弦楽のための組曲

コレッリ:合奏協奏曲 ニ長調 Op.6-4 
         (Vnソロ:増永花恵、山下はる香、Vcソロ:根津要)

ヴィヴァルディ:4つのヴァイオリンのための協奏曲 ロ短調 Op.3-10 RV580
         (Vnソロ:佐々木友子、高橋百合、徳永希和子、佐藤直子)

(休憩15分)

ワーグナー:ジークフリート牧歌 Op.103 弦楽合奏版初演(編曲:増永花恵)
         (指揮:小林英昭、with アンサンブルフィーデル)

チャイコフスキー:弦楽セレナーデ Op.48

 このコンサートは、新潟の地で、たくさんの音楽家を育てたヴァイオリン指導者の鈴木和子さんの喜寿を祝って、門下卒業生で、新潟・関東・関西等で活躍するプロの演奏家が、10年ぶりに新潟に集って開催する演奏会です。
 バロック音楽のコレッリ、ヴィヴァルディから、ワーグナー、チャイコフスキー、さらに現代のラターまで、多彩な曲が弦楽アンサンブルで演奏されるというのが魅力です。
 卒業生のほか、賛助出演として、ヴィオラの増永雄記さん、チェロの根津要さん、渋谷陽子さん、コントラバスの別森麗さん、チェンバロの村山和子さんが加わり、鈴木和子さんが代表を務めるアンサンブル・フィーデルの皆さんもワーグナーで共演されます。
 この公演に先立ち、8月9日には、「弦楽四重奏で聴く ヘンゼルとグレーテル」という公演や門下卒業生で弦楽器製作者の中林弦さんによる「弦楽器製作者講座」も開催されています。これも合わせて、ドルチェフェスティバル2022として開催されました。

 さすがに鈴木さんの喜寿を祝うコンサートだけあって、素晴らしい音楽家が結集しています。鈴木さんとは縁のない私が参加するのもはばかられるようにも思いましたが、出演される知人よりチケットをいただきましたので、聴かせていただくことにしました。

 とはいえ、新型コロナ感染のBA.5の爆発的感染が続く新潟にあって、混雑・密集を避けるため、参加予定だった先週末のコンサートは参加を断念しました。
 今回もどうしようかと思案しましたが、高額なチケットをいただきましたし、ひどい混雑もないだろうと予想し、参加させていただくことにしました。

 今日は山の日の休日です。与えられた雑務を終えて、白山公園駐車場へと車を進めました。いつもの上古町の某所で絶品の冷やし中華をいただきましたが、中に入るなり間髪を入れず「冷やし、大盛りねえ」と言われてしまいました。夏はこれしか食べてませんものねえ・・。でも、美味しかったです。

 白山公園を抜けて、りゅーとぴあに行きますと、コンサートホールでは吹奏楽コンクールの県大会が行われており、ロビーは生徒たちで賑わっていました。ホールからは音楽が漏れ聴こえ、東ロビーは出場校の記念撮影場所となっていました。
 県代表として西関東大会に出場するのはどこの学校でしょうか。今年の西関東大会は新潟市での開催ですので、皆さん頑張っていただきたいと思います。

 チラシ集めをして音楽文化会館に行きますと、すでに開場されており、私も入場し、他の客との距離を十分にとるため、前方は避けて後方に席を取りました。両隣、前後方とも間隔を取ることができ、ゆったりと聴くことができました。

 入場時に渡されたプログラム冊子は、この手の演奏会にしては立派で充実した内容であり、開演までの間、じっくりと拝見させていただきました。
 鈴木和子さんは、新潟に来県されて今年で50年だそうで、以後ヴァイオリン指導者として新潟の音楽界を牽引してこられました。
 門下卒業生が結集してのドルチェコンサートは、1999年から開催されてきましたが、しばらく開催が途絶えていました。今回は鈴木和子さんの喜寿を祝って、前回から10年ぶりに、第7回ドルチェコンサートとして開催されました。
 プログラムには各演奏曲での出演者と並び方、曲目解説のほか、出演者全員の写真、プロフィール、コメントが載せられており、読み応えがありました。
 賛助出演者には、新潟で活躍する音楽家のほか、日本センチュリー交響楽団の副首席奏者のヴィオラの増永雄記さんもおられました。

 開演時間となり、拍手の中に出演者が入場しました。女性方は色とりどりのドレスが麗しかったです。弦5部が4-4-3-2-1という編成で、コンミスのポジションは、音楽祭や主要オケのエキストラで活躍されている徳永希和子さんです。
 1曲目はラターの「弦楽のための組曲」です。4曲からなる組曲ですが、最初の1音を聴いただけで「プロの音だ!」と驚きました。実際にプロとして各地で活躍されている演奏家ばかりですので、当然のことなのですが、美しい弦楽アンサンブルに魅了されました。
 ラターの曲自身も大変美しく親しみやすい曲であり、うっとりと聴き入りました。第3曲での徳永さんのソロも美しく、疲れた心は癒されました。この曲を聴くことができただけでも、今日の収穫と思えるほどに最初から楽しませていただきました。

 照明が落とされてステージが整えられ、チェンバロの村山和子さんも加わって、2曲目はコレッリの「合奏協奏曲」です。椅子が片付けられて、チェロ以外は立奏となりました。ヴァイオリンソロは、増永花恵さんと山下はる香さん、チェロソロは根津要さんです。
 増永さんは鈴木さんの娘さんでいらっしゃいますが、関西フィルの第2ヴァイオリンのトップ奏者として活躍されています。山下さんも新潟県音楽コンクールの県知事賞の受賞者で、関西で演奏活動・教育活動をされているそうです。賛助出演の根津さんは、新潟で活発な演奏活動をされていますので、今さら紹介するまでもないでしょう。
 現代の音楽から一気にバロック時代へと飛び、3人の独奏者とともに、素晴らしいアンサンブルで楽しませてくれました。

 場内が暗転して、再びステージが整えられ、続いては4人のソリストとともに、ヴィヴァルディの「4つのヴァイオリンのための協奏曲」で、前曲と同様に、チェンバロが加わり、チェロ以外は立奏です。
 ヴァイオリン独奏は、新潟での活躍が目覚しいお馴染みの佐々木友子さん、高橋百合さん、ラターで美しい独奏で魅了した徳永希和子さん、そして教育活動や演奏活動を活発にされている佐藤直子さんの4人です。
 4人のソリストそれぞれに個性があり、ヴァイオリンの音色も異なっていたのが面白かったです。演奏はもちろん素晴らしく、心地良く演奏を聴かせていただきました。

 ここで休憩となり、ステージに椅子が並べられ、後半最初は、ワーグナーの「ジークフリート牧歌」です。増永花恵さんの編曲による弦楽合奏版で、今日が初演となります。
 指揮はヴィオラで参加の小林英昭さんです。小林さんは関東方面で、プロ・アマ・ジュニアのオーケストラの指揮をされているそうです。
 鈴木和子さんが主宰するアンサンブル・フィーデルの10人の奏者が加わって、編成は大きくなり、弦5部は、6-7-4-4-2となりました。鈴木さんもアンサンブル・フィーデルの一員として加わって、第1ヴァイオリンの2列目で演奏されました。コンミス席には編曲者の増永さんが着かれました。
 編成が大きくなった分だけ弦楽アンサンブルの音の厚みを生み、波のように繰り返す感情のうねりを味わい、弦楽合奏版の初演を楽しませていただき、管弦楽版とは違った曲の魅力を味わいました。

 ここで、演奏に参加された鈴木さんの挨拶があり、続いて鈴木さんの次女でコンサートの要として活躍された増永さんの挨拶があり、鈴木さんへの花束贈呈が行われ、出演者と観客ともども、鈴木さんの喜寿を祝いました。

 ステージが整えられて、再び最初の編成(4-4-3-2-1)に戻り、最後はチャイコフスキーの「弦楽セレナーデ」です。コンミスはもちろん増永さんです。
 演奏は何も言うことはありません。力強い冒頭のテーマの演奏から引き込まれ、躍動感と哀愁、各楽章の対比も鮮やかに、曲の魅力を余すことなく示し、最後に冒頭のテーマが演奏されると感動が胸に込み上げてきました。

 拍手に応えてアンコールを期待しましたが、増永さんの挨拶があって、アンコールなしで記念すべきコンサートは終了となりました。

 出演した門下卒業生の皆さんは各地でプロとして活躍されていますが、鈴木和子さんの喜寿を祝って新潟に集まりました。その中には、鈴木さんの娘さんの増永花恵さん、尾崎望さん、そして、そのご家族も参加されておられたようです。
 アンサンブル・フィーデルの皆さんと研修生として参加された高校生1年の尾崎晴さん以外はプロの音楽家であり、実力者揃いです。練習はわずかに2日間だけだったそうですが、初演曲も含め、各曲ともに聴き応えある演奏に仕上げてくれました。

 大きな感動をいただき、出演者ともども鈴木和子さんの喜寿を祝い、今後のさらなるご活躍を祈念し、ホールを後にしました。


 なお、今回の演奏会で中心的役割を担われた関西フィルの増永花恵さんと、ご主人で日本センチュリー交響楽団の増永雄記さんは、8月13日の朝、BSテレ東で放送された藤岡幸夫さんのエンター・ザ・ミュージックに出演されておられました。素晴らしい活躍ぶりに感銘を受けました。

  

(客席:18-12、¥3000)