新国立劇場バレエ団 コッペリア
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2021年5月4日(火)14:00 新国立劇場 オペラパレス
新国立劇場バレエ団
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:冨田実里
 
振付:ローラン・プティ
音楽:レオ・ドリーブ
芸術アドヴァイザー/ステージング:ルイジ・ボニーノ
美術・衣裳:エツィオ・フリジェーリオ
照明:ジャン=ミッシェル・デジレ

スワニルダ:木村優里
フランツ:福岡雄大
コッペリウス:山本隆之


第1幕

(休憩25分)

第2幕

  
  

 GWではありますが、今日は出かける予定はなく Stay Home を励行することにしましょう。先日東京交響楽団のネット配信を楽しみましたが、今回は新国立劇場バレエ団のネット配信です。
 演目はドリーブのコッペリアです。バレエの中身は知らなくても、よく聴く有名曲がありますので、音楽ファンならドリーブという作曲家、コッペリアというバレエの名前くらいはご存知のことと思います。私も曲しか知りません。

 この公演は、本来であれば5月1日〜8日の予定で開催されるはずでしたが、新型コロナ感染拡大による緊急事態宣言により、新国立劇場で開催されるはずだったオペラ、演劇、バレエの全公演は中止されることになりました。
 しかし、バレエ公演に関しましては、5月1日の公演は中止になりましたが、5月2日、4日、5日、8日の各公演は、時間と出演者はそのままに、無観客で上演され、ネットで無料生配信されることになりました。
 バレエ音楽は好きですが実際のバレエ公演はめったに観たことはなく、せっかくの機会ですので、Stay Home のお供に視聴させていただくことにしました。

 各公演とも生配信のみでタイムシフト配信はありません。主要キャストは各回で異なり、出演者により印象は変わるかも知れませんが、4日の公演は、スワニルダがファーストソリストの木村優里さん、フランツがプリンシパルの福岡雄大さん、コッペリウスはオノラブル・ダンサーの山本隆之さんでした。

 オペラと同様に、バレエも演出・振付の違いにより舞台設定、登場人物のキャラクター、物語の展開などが大きく異なります。今回の公演はローラン・プティ版とのことで、他の版と異なりパリに舞台を移して洒落た演出・振付になっているんだそうですが、私には分かりません。
 音楽好きの私としましては、バレエというよりも東京フィルが演奏するドリーブの音楽を、容姿端麗なお姉さん方の踊りを見ながら聴こうということです。バレエファンの皆様には失礼かも知れませんが、お許しください。


 という前置きは止めにして、新国立劇場のサイトに接続しましょう。新国立劇場のオーケストラピットでオケのメンバーが音だししていました。
 無観客ですので、拍手のない中に冨田さんがオケピットの指揮台に上がり、客席に向かって一礼して開演です。

 開演したはずなのに、聴こえてきたのは手回しオルガンの演奏で、あっけにとられました。これがこの版の演出のようです。幕が上がりますと、パリの街角を髣髴させるようなシンプルなセットがあり、右手のコッペリウスの家のベランダにはコッペリアがいて、街を見下ろしていました。

 以下、バレエを知らない私には感想を述べようもないのですが、スワニルダ、フランツを演じた二人のソリストとも見事であり、スワニルダの友人6人のほか、娘たちや衛兵たちの群舞も美しく拝見しました。
 お馴染みの第1幕のワルツやマズルカは、東京フィルの素晴らしい演奏と共に、バレエダンサーの美しい姿に見とれながら、よだれこそ垂れませんでしたが、うっとりと楽しませていただきました。見せ場はたっぷりなのに、拍手がないのは寂しいですね。

 コミカルなダンサーの振付は洒落ていて、何となくパリの空気感を感じました。胸をキュンとさせるような可愛い仕草もあって楽しめました。これがローラン・プティ版の魅力なんでしょうね。
 音楽に合わせて、踊りと表情、仕草だけで物語を語っていくバレエの奥深さを、遅ればせながら再認識させていただきました。

 ただ、思いを寄せる女性に似せた人形(コッペリア)を作って、人形とシャンパンで乾杯し、ワルツを踊って戯れる寂しい男(コッペリウス)が哀れであり、密やかに暮らす男の家に他人が勝手に入り込んで秘密をあばいて大暴れしてしまうというのは可哀想です。そして大切な人形の衣裳をはがされ、最後はばらばらに壊れてしまいます。
 毎日さびしく暮らしいる男としましては、どうしてもコッペリウスに感情移入してしまい、悲しい結末に心を痛め、最後の若者たちの結婚を祝う大騒ぎが虚しく感じられました。

 手回しオルガンの音楽にのせて拍手のない中にカーテンコール。最後は指揮の冨田さんもステージに上がって、通常通りのカーテンコールの後、幕が下りて終演となりました。

 物語の筋書きは別にして、素晴らしいバレエであり、演奏だったと思います。バレエのことは何も知らない素人の私ですが、バレエの魅力、素晴らしさを知ることができて良かったです。

 新型コロナ禍の緊急事態の中で、無観客で公演を続け、生配信してくれた新国立劇場バレエ団に感謝し、ブラボーを贈らせていただきます。
 


(客席:PC前、無料)