ドイツ出身の若手チェリストのコンサートです。コンサートの案内を見るまで、この人の名前は知りませんでしたが、プロフィールを見ますと、アンネ=ゾフィー・ムターとクリストフ・エッシェンバッハに見出されたそうで、著名な音楽家との競演を重ね、活発な演奏活動をされています。
だいし銀行主催の「だいしライフアップコンサート」の一環ですが、これまでの経験で、このコンサートに外れはありません。素晴らしい演奏家を見つけて招聘する主催者の見識の高さに驚きを感じています。
そんなわけで、エルシェンブロイヒの名前は聴いたことがありませんでしたが、期待が持てましたので、早々にチケットを買っていました。
連休の最終日、風邪を引いて体調不良ではありましたが、チケットを無駄にしたくもなく、ホールへと向かいました。
開場5分前に到着しましたが、開場待ちの長い列ができていて、その末尾に並びました。やはり、なかなかの人気のようですね。開場時間となり、左中段に席を取り、開演を待ちました。客の入りはよく、ほぼ満席の大盛況となりました。
エルシェンブロイヒとピアノのグリニュクが登場し、ベートーヴェンのチェロソナタで開演しました。まず、チェロの音量の豊かさ、豊潤な響きに驚きました。数あるチェロ・ソナタの中でも美しく、馴染みやすい曲であり、うっとりと聴き入りました。感冒薬内服でボーっとした頭でしたが、気分が晴れ渡ってきました。
エルシェンブロイヒはチラシの写真以上のイケメンであり、奏でる音楽も気品にあふれ、洗練されています。雄大な音楽を朗々と奏で、思いっきり歌ったかと思えば、情熱的に燃え上がり、聴き惚れるばかりでした。
ピアノのグリニュクも負けず劣らずであり、互いにせめぎあったり、一体となったりと、息もつかせぬ30分間でした。
続いて、作曲者の清水さんの挨拶があった後、清水さんがエルシェンブロイヒのために作曲し、2015年に初演したという「Into
the Deep」が演奏されました。清水さんの作曲への心構え、「きれい」と「美しい」とは違うなど、興味深い話をされていましたが、曲は複雑であり、素人の私には難解ではありました。しかし、チェロの多彩な音色とそれに絡み合うピアノの響きの美しさには感動しました。凄い曲なんだなあということは実感され、楽譜を具現化するこの二人があってのものと感じ入りました。
私の後席からはブラボーが贈られ、ホールは大きな拍手で満たされました。清水さんもステージに上がって二人の演奏を讃えていました。
休憩後は清水さんによるインタビューがあった後、フマニノフのチェロ・ソナタです。この曲はベートーヴェン以上に雄大な曲であり、うねるような情熱がぶつかり合って、協奏曲でも聴くような印象を受けました。チェロもピアノも対等に渡り合い、ぶつかり合い、圧倒されるような演奏だったと思います。エルシェンブロイヒのリサイタルではありますが、グリニュクの素晴らしさも感じさせた演奏でした。
アンコールにベートーヴェンを演奏して終演となりましたが、いずれの演目も、私の体調不良を吹き飛ばしてくれるような快演だったと思います。最後に清水さんが話されていましたが、このようなコンサートを企画した関係者にも拍手を贈りたいと思います。
と、良い気分でホールを出ましたが、やはりのどは痛いし、頭も痛いです。今夜は早く寝て、明日の勤務に備えましょう。急に涼しくなりました。皆さんも健康管理には注意してください。
(客席:G-7、¥2000) |