宮谷理香ピアノリサイタル
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2013年12月1日(日) 14:00  新潟市江南区文化会館 音楽演劇ホール
 
ピアノ:宮谷理香
 
シューベルトのロマン、紡ぎだされる歌心

シューベルト:即興曲 Op.90-2 (D.899)

シューベルト/リスト編:「聞け、聞け、ひばり」によるセレナーデ
シューベルト/リスト編:ます

シューベルト:即興曲 Op.142-3、Op.142-4 (D.935)

(休憩15分)

あふれる色彩、至福の音空間

ドビュッシー:“亜麻色の髪の乙女” 〜「前奏曲集」第1巻 第8番
ドビュッシー:“金色の魚” 〜「映像」第2集より

武満 徹:雨の樹 素描
ショパン:“雨だれ” 〜「24の前奏曲集」より 作品28-15
ドビュッシー:“雨の庭” 〜「版画」より

ショパン:ノクターン第2番 作品9-2
ショパン:ポロネーズ第6番 作品53 「英雄」

(アンコール)
ラヴェル:水の戯れ
ショパン:子犬のワルツ
ショパン:ノクターン第20番 (遺作)
 
 

 ついに12月になってしまいました。コンサートも花盛りで、今週末も聴きたいコンサートがたくさんあります。それも同時刻開催などもあって、選択に困ってしまいます。
 仕事もありますし、実際は行けないコンサートばかり。昨日も行く予定にしてチケットを買っていた公演があったのですが、諸般の事情で断念せざるを得ませんでした。チケットを無駄にしたのは今年何回目かなあ・・・。

 慌しさは増すばかりで、コンサートどころでないというのが客観的状況なのですが、気分転換も必要です。そこで、本日は数あるコンサートの中で、このコンサートを選びました。
 江南区文化会館の開館一周年を記念してのコンサートで、昨日もピアノ・リレーコンサートが開催され、宮谷さんがゲスト演奏しています。このホールのスタインウェイD275を選定したのが宮谷さんということで、ホールとの結びつきが強いようです。
 昨年の開館記念の宮谷さんのリサイタルは、同時刻開催の仲道郁代さんのリサイタルと重なってしまって行けませんでしたので、一周年記念のリサイタルは何としても聴かねばと思ったしだいです。

 昼食を食べて、ゆっくりとホールに向かいました。車での交通の便は良く、駐車場の心配もないのがこのホールの良さです。あっという間に着いて、時間に余裕がありましたので、併設されている郷土資料館をひと回りし、図書館で雑誌を読んで開場を待ちました。

 開場となり、前方右寄りに席を取りました。客の入りは7割程度でしょうか。ちょっと興ざめのブザー音の後、館長による開館一周年の挨拶があり、いよいよ開演です。

 紫色のドレスの宮谷さんが登場。相変わらずお美しく、スリムで容姿端麗。私の席は、演奏時の表情が良く見え、音響的にも良さそうなベストポジションです。

 前半は、11月22日に発売されたCDに収録されているシューベルトの作品が演奏されました。最初に即興曲を演奏し、その後は宮谷さんによる曲目紹介を交えながら演奏が進められました。
 宮谷さんの容姿そのままに、エレガントで流れるように音楽が奏でられました。音はクリアであり、粒立ちが良く、強奏部でも音は全く濁りません。こんなにもきれいなピアノの響きは最近聴いたことがないように思います。
 トークの中で宮谷さんが話されていましたが、1年経って、ピアノの音も、ホールの響きも変わったそうです。ピアノはこの1年間定期的な弾き込みがなされ、音が良くなったそうであり、ホールも過度に響きすぎることなく、ソフトな程よい響きが素晴らしいと話されていました。
 私の印象もまさにその通りであり、ピアノのクリアな響きに感銘しました。濁りのない低音、きらめきのある高音。どの音をとっても美しく感じました。
 単に音の良さだけでないのはもちろんであり、宮谷さんの作り出す流麗な音楽に、うっとりと聴き入っていました。美しい人が弾く音楽は、よりいっそう美しく心に響きます。

 後半は衣裳換えして、クリーム色のドレスで登場しました。後半は色彩感ある音の響きを楽しんでもらう選曲をしたそうです。最初にドビュッシーが2曲演奏されましたが、まさに色彩感ある音楽でした。
 続いての3曲は水にちなんだ曲ということでしたが、透明感のある心打つ演奏でした。客も息をのみながら聴いており、武満では無音の緊張感を楽しむこともできました。聴き飽きた感のある「雨だれ」も、新鮮な感動を与えてくれました。
 最後はショパンのノクターンをしっとりと演奏し、英雄ポロネーズで盛り上がりました。情熱溢れる演奏でしたが、決してうるさくなく、上品さを失わないのは宮谷さんならではと感じ入りました。

 アンコールは、ラヴェルとショパンが演奏されましたが、「水の戯れ」は、今日のコンサートを象徴するような白眉の演奏でした。クリスタルのように透明感があり、クリアで、輝くような演奏に心洗われました。続いての「子犬のワルツ」は演奏しながら汗を拭く真似をしたりなどユーモアを交えて楽しませました。最後のノクターンは、むせび泣くように切々と心に訴えかけ、感動の中に終演となりました。

 今日の演目は、新アルバム発売記念に12月4日に浜離宮朝日ホールで開催されるリサイタルを先取りした内容です。東京でのリサイタル直前ということもあって、十分に弾き込まれ、最良の状態で聴くことができたのかもしれません。
 演奏の良さのほか、宮谷さんのトークでの内容や話し振りも素晴らしく、ヴィジュアル的にも楽しめた素晴らしいコンサートでした。曲に合わせての照明効果も、嫌みがなくて良い雰囲気を出していました。

 そして、美しいピアノの音色の良さも特筆大書すべきでしょう。フルコンサートピアノとして主だったホールには必ずあるスタインウェイD275ですが、今日は良い音を出していました。宮谷さんの音作りが良いには違いありませんが、ホールでの管理の仕方や、調律の良さもあるものと思います。ホールの響きに合わせた最良のチューニングがなされているものと思います。

 ピアニストとピアノ、ホールは切り離すことはできません。今日はこれらが三位一体となり、最良の状態で、一期一会の音楽を作り出してくれました。宮谷さんの素晴らしさを再認識し、大満足でホールを後にしました。

 4時にホールを出て、バイパス経由で20分で自宅に到着。私にとっては市内では一番便利なホールかもしれません。

  

(客席:5−25¥2000)