オペラ 「椿姫」
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2011年1月28日(金) 18:30  新潟県民会館大ホール
 
指揮:現田茂夫
演出:十川 稔
 
ヴェルディ:歌劇「椿姫」  全3幕 イタリア語上演

  第1幕 

  (休憩20分)

  第2幕 第1場、第2場

  (休憩20分)

  第3幕


ヴィオレッタ:森 麻季
アルフレード:木下紀章
ジェルモン:青山 貴 

フローラ:佐藤路子
ガストン子爵:直野良平
ドゥフォール男爵:木村孝夫 
ドビニー公爵:藤山仁志  ほか

管弦楽:オーケストラ・アンサンブル金沢
合唱:新国立劇場合唱団
バレエ:貞松・浜田バレエ団、渡辺珠実バレエ研究所
 
 
 石川、富山、新潟、福井、兵庫の5つのホールが共同し、文化庁の平成22年度優れた芸術活動への重点支援<舞台芸術共同制作公演>という助成を得て制作されたオペラであり、5会場で6公演開催されます。地方のホール単独では困難でも、共同制作することで、このようなオペラの公演ができるという意味で、画期的な試みといえます。今日の新潟公演は金沢公演、富山公演に続いて3回目の公演となります。

 絶えることのない寒波襲来で、新潟県は厳寒・豪雪の日々が続いています。今日もどうなることかと心配しましたが、冷え込みは厳しいものの、雪は小康状態で無事に行くことができました。
 仕事を早く切り上げて、大急ぎで県民会館に向かい、何とか開演に間に合いました。見晴らしの良い2階最前列中央に席を取りましたが、今回は家内と娘と3人で鑑賞。他の二人は客席で待っていました。満席かと思いきや、ちょっと空席が目立ちました。オケピットではOEKの皆さんが音出ししていましたが、狭い県民会館のオケピットに入りきらず、シンバル、大太鼓はステージ右袖に上がっていました。

 さて、今回の公演は予想外のアクシデントがありました。この公演の三枚看板のひとりである佐野成宏さんが「過労による発熱」ということで、急遽降板となってしまったのです。ロビーには佐野さんのメッセージのほか医師の診断書まで掲示されていました。ネットで調べてみたら、金沢公演でも本調子じゃなかったようです。
 開演に先立って、指揮の現田さんによる挨拶があり、急な交代についてのお詫びがありましたが、人気の森麻季さんもさることながら、佐野さんの歌声を楽しみにしていた私としましては、かなり残念でした。

 さて、場内が暗転し、前奏曲で第1幕の開演です。うら悲しく、痛切に心に迫る弦の音はOEKのすばらしさを物語り、心地よいサウンドがホールを満たしました。
 赤い幕が上がるとそこはパリの社交界。大きなシャンデリアがひときわ目立ち、セットも衣裳も豪華な雰囲気を出していました。
 ヴィオレッタ役の森麻季さんの歌声はリリカルで可憐。最初はちょっと線が細く、声量が足りないようにも思いましたが、すばらしい容姿、演技と相まって、魅力満開です。問題はアルフレード。佐野さんの代役は木下紀章さんです。カヴァー歌手としてパンフレットにもクレジットされていましたから、こういう事態に備えて準備はしていたのでしょうが、ちょっと役不足かと思いました。演技には問題ありませんでしたが、声量、音程の安定さなどで差を感じないではいられませんでした。第1幕の見せ場の「乾杯の歌」は、合唱が素晴らしく、その分主役の二人の声量不足がちょっと気になりました。
 第2幕で登場したジェルモンの青山さんは素晴らしい声量と存在感で、文句ない歌声でした。そのほかの脇役もまずまずと感じましたが、一部アレッというような歌手も混じってました。
 第2幕第2場の夜会の場面では各公演とも地元のバレエ団が出演していますが、新潟では渡辺珠実バレエ研究所の6人の女性ダンサーが見事な踊りを披露してくれました。
 切々と胸に響く前奏曲で第3幕が開演。森さんの歌声、演技が冴え渡っていました。ヴィオレッタの悲しい最期を見事に演じ、感動を誘いました。

 ということで、佐野さんの歌声を聴けなかったのは誠に残念でしたが、オペラ公演としてはまずまず良かったと思います。期待通りの森さん、圧倒的存在感の青山さんが光っていました。合唱の新国立劇場合唱団も良かったです。そして、OEKの演奏の素晴らしさは言うまでもありません。もちろん、まとめ上げた指揮の現田さんあってのことですし、十川さんの演出の良さもありましょう。
 新潟公演は残念ながら万全の体制ではなかったですが、地方でこれだけのオペラ制作ができるということを証明したという意味で良かったと思います。佐野さんには早い快復をお祈りしたいと思います。

 外に出ると厳寒の世界。駐車場への道はガチガチ、ツルツル。明日からこの冬最強の寒波襲来の予報が出ています。春はまだ遠いですね。
 

(客席:2階1−20、S席:9000円)