第2回 Home Coming Concert “輪”
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2009年8月1日(土) 13:30  新潟大学教育学部音楽棟合唱ホール
 
学内オーディションで選ばれた在学生:永山喬子、丸山弓実、柳沢 萌、高野菜々子、奥山友梨、松田麻美
卒業生:太田玲奈、籏智裕子、水沼慎一郎、佐藤瑠美、高橋宣明、浅野加歩理、奈良秀樹、原 崇教、松村牧子、渡辺靖子
教員:宇野哲之、鈴木和子、鈴木賢太、相馬上子、田中幸治、丸山たい子
 
 
1st Stage:在学生による演奏

ラフマニノフ:2台のピアノのための組曲第2番 より タランテラ 
(Pf:永山喬子、丸山弓実)

ベッリーニ:「喜ばせてあげて」、「ああ、幾度か」 (S:柳沢 萌、Pf:宮本ゆかり)

ショパン:幻想ポロネーズ 変イ長調 作品61 (Pf:高野菜々子)

インファンテ:「アンダルシア舞曲」より 「1.感傷的に」「2.優雅に」 (Pf:奥山友梨、松田麻美)

(休憩10分)

2nd Stage:卒業生、教員による演奏

グリンカ:ヴィオラソナタ ニ短調 第1楽章 
(Va:太田玲奈、Pf:籏智裕子)

水沼慎一郎:虚空への祈りII (初演) (Pf:佐藤瑠美)

シューベルト:「白鳥の歌」 より (T:高橋宣明、Pf:金川唯:学生)

ベートーヴェン:ピアノソナタ第21番「ワルトシュタイン」第1楽章 (Pf:浅野加歩理)

ヤナーチェク:「おとぎ話」全曲 (Vc:宇野哲之、Pf:相馬上子)

リスト:「ペトラルカの3つのソネット」より 
 1.平和は見いだせず 3.私は地上に天使のような姿を見た 
(S:丸山たい子、Pf:田中幸治)

ブラームス:「パガニーニの主題による変奏曲」第1集Op.35 より (Pf:鈴木賢太)

モーツァルト:セレナード第13番 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」 K.525 全曲
         
(Vn:奈良秀樹、鈴木和子、原 崇教、松村牧子、Va:太田玲奈、Vc:渡辺靖子 ほか学生)

 
 

 夏枯れの新潟、今週もさっぱりコンサートがありません。吹奏楽コンクールの県大会はありますが、寂しい週末です。唯一の救いがこのコンサートです。新潟大学教育学部の卒業生、在学生、教員を結んでのコンサートにより、コミュニケーションの輪を作ろうという趣旨のようです。昨年に引き続いての第2回のコンサートで、卒業生にとっては、懐かしい学舎に戻って(Home Coming)の演奏となります。
 ただそれだけでは部外者には興味は薄いのですが、出演する卒業生、教員は新潟の音楽界ではそれなりに知られた人たちであり、ほかにコンサートがないという事情もあって、多少の期待を持って行ってみることにしました。

 会場は新潟大学教育学部の中にある合唱ホールです。新潟大学五十嵐キャンパスは30数年前に通った懐かしい場所です。内野駅からスイカ畑の中を歩いて通っていたことを思い出します。今では住宅が密集し、五十嵐砂漠と揶揄された昔は想像できません。西門駐車場に車を置き、構内を歩いてみましたが、懐かしい面影に若き日の想い出が甦りました。
 さて、合唱ホールは教育学部の裏側の建物の2階にあります。入り口が分かりにくかったですが、案内の人がいて助かりました。あまり宣伝されていなかったように思いますが、一般人もかなりいて、なかなかの盛況でした。

 前半は在学生の演奏でしたが、オーディションで選ばれただけあって、いずれも十分に聴き応えある立派な演奏でした。特に、ソプラノの柳沢さんの歌声はお見事でした。

 後半は卒業生の演奏で、アンサンブル・オビリーでお馴染みの太田さんの演奏で始まりました。ヴィオラソナタは聴く機会がなかったので楽しめました。
 「虚空の祈りII」は卒業生の水沼さんの作曲で、今日が初演でした。佐藤さんの素晴らしい演奏もあって、まさに「虚空」を感じさせ、心が清められるように感じました。しかし、ホールの空調の音で静寂が得られなかったのが残念でした。
 メールをいただいたりして勝手に親近感を感じている高橋先生の歌声も良かったです。しっとりとした歌声に癒しを感じました。ピアノ伴奏はかつての教え子の学生さんとのことです。師弟共演というのも良かったです。
 「ワルトシュタイン」も立派な演奏でした。浅野さんはピアノ教室を主宰され、幼稚園児に音楽を教えたりしているそうですが、こういう実力者が埋もれているのはもったいなく感じました。

 次からは教員の演奏となり、最初は宇野先生の演奏でした。初めて聴く曲ですが、朗々と響き渡るチェロの音色に酔いしれました。曲も演奏も良かったです。ピアノの相馬さんは以前どこかで演奏を聴いたことがあるように思います。演奏もさることながら、私好みのスリムな美人で、うっとりしてしまいました。
 続く丸山さんの歌声も素晴らしく、力強さの中にリリカルさもあって、堂々とした歌いぶりは貫禄を感じさせました。個人的には今回で一番楽しめたように思います。
 次の鈴木先生の「パガニーニの主題による変奏曲」は手に汗握るスリリングな演奏でした。時々ため息をつきながら、最後は息も絶え絶えというような熱演で、聴く方も思わず頑張れと叫びたくなるようで、心地よい疲労感を感じました。

 そして最後は、卒業生と在学生が一緒になっての弦楽合奏です。コンマスが奈良さんで、新潟の大谷康子と勝手に思っている潟響のコンミス・松村さんが第2ヴァイオリンのトップです。編成は5−4−3−2−1。指揮は先ほどチェロの演奏をしたばかりの宇野先生です。演奏は、臨時編成ですからアンサンブルには多少の難はありますが、ベテランと若者が一緒になって音楽を作り上げていて、温かさを感じる演奏だったと思います。
 これで終演となりましたが、3時間に以上の長丁場。たっぷりと音楽に浸ることができて、お腹いっぱいというところでしたが、進行がてきぱきとしていて気持ちよく、時間の長さを感じさせませんでした。

 学生も卒業生も教員もそれぞれが良い演奏をしてくれて良かったです。無料で聴かせてもらって感謝です。考えてみると、毎年たくさんの卒業生が巣立っているわけで、地域に中で埋もれている音楽家も多数おられるに違いありません。実力を持った教育者も多数おられます。このような機会によって、地域住民との交流も深められると良いと思います。
 ただ、難点としてはホールの環境です。ステージに音響反射板のついた立派なホールですが、空調の音がうるさくて静寂が得られませんでした。客席は平土間に並べられた折りたたみパイプ椅子なので、さすがに3時間に及ぶコンサートとなりますとお尻が痛くて困りました。本当は「だいしホール」や「音楽文化会館」のような専用ホールで聴きたいところでしたが、かつて学んだ大学の教室で演奏することに意義があるわけですから、これはこれで素晴らしい企画だったと思います。

 私にとっても30数年ぶりに学舎に帰ることができ、まさにHome Coming でした。近くに住みながら、大学構内に入る機会は全くありませんでした。今後もこのような催しに期待したいと思います。
 

(客席:3列目中央右、自由席:無料)