待ちに待った小澤さんの登場。本当に心待ちにしていたコンサートでした。早くからコンサート開催の情報は聞いていたものの、チケットがなかなか発売されずやきもきしていました。いざ発売されてもすぐに完売。チケット予約の電話がつながらず、ようやく私の電話がつながったときには、当館扱い分は完売しましたとの悲しい知らせ。主催者である某氏(ネット上でもお世話になっており感謝申し上げます)の計らいでチケットを手に入れることができました。
もともとはにいがた音楽協会創立10周年記念コンサートとして企画され、これにテレビ新潟とりゅーとぴあ(新潟市芸術文化振興財団)が共催者として加わったものです。小澤さんのネームバリューはさすがであり、チケットを買い損ねた人がかなりあったようですが、会場に赴きますと「当日券あります」の張り紙。これにはビックリ、ガッカリ。そう言えば抽選販売された昨年のウィーン・フィルも当日券がありましたもんねえ・・・。
さて、会場に入ると知った顔が多数。日頃東響定期には来ないような人も多数参集しておられます。VIPのお姿があったり、何となく華やいだ雰囲気が漂います。満席の客席は久しぶりです。小澤さんのりゅーとぴあ初出演、そして名手揃いの水戸室内とくれば期待はいやがおうにも高まります。ただしオール・モーツァルトというのは個人的には残念ではありますが。
拍手の中楽員とともに小澤さんが入場。これが小澤流。1曲目は「イドメネオ」序曲。小編成のオケながら、ほどよい音量で美しかったです。曲に魅力は感じませんが、楽しめた演奏でした。
2曲目は協奏交響曲。恥ずかしながらこれまで聴いたことがない曲ですが、こんなにも悲しい曲想の曲もあったのだねえと、うっとりと聴き入っていました。ヴィオラの協奏曲はめったに聴いたことはないですが、私の席ではヴァイオリンは目立っていましたがヴィオラはオケに埋もれることが多く、影が薄く感じられました。これはヴィオラという楽器の音色、音域からくる宿命なんでしょうね。
後半は「リンツ」。個人的に好きではないこの曲を飽きさせずに聴かせたということはいい演奏だったのだと思います。ただ、前半に比して弦の音ががさついて聴こえたのは気のせいでしょうか。
圧倒的な拍手で会場は盛り上がりました。そしてアンコールは「G線上のアリア」。今日、小澤たち一行は長岡市の中学校で震災被害者の皆さんのための慰問コンサートを開き、この曲を演奏していました。慰問コンサートを行うというニュースは前から流れていましたし、今日のコンサートに集まった方々のほとんどは知っていたと思います。アンコールに「G線上のアリア」が演奏されたとき、これが何を意味するかをほとんどの人はすぐに理解したはずです。震災の犠牲者に捧げた曲に違いないと。
演奏は心にしみ入るものでした。まさに追悼にふさわしい演奏でした。演奏後沈黙と静寂がしばし会場を包む、はずでしたが、一部の観客(Bブロック)が盛大な拍手。小澤さんがまだ手を下ろしてもいないのに。こんな悲しみに満ちた演奏の後にブラボーでもあるまいに。沸き上がりかけた拍手の中、小澤さんはうつむき、上げた手を下ろしません。さすがに拍手はやみ、しばしの静寂が会場に戻ってきました。
指揮棒を下ろさないうちはまだ演奏は終わっていません。圧倒的熱演の後の感極まってのフライング拍手は理解できないでもないですが、明らかな追悼演奏である「G線上のアリア」、消え入るような悲しみの演奏、このような状況下でどうして拍手などできましょうか。
フライングの問題は今回だけの問題ではないですが、今回はあまりに悲しかったです。余韻、静寂を味わう心の余裕を忘れてはなりません。2000人近くの人々が集まるのですから、いろんな人がいても仕方ありません。フラッシュ撮影していた人もいましたし、あめ玉をガサガサさせながら取り出していたご婦人もいました。最低限のマナーと状況判断は忘れてはならないと思います。
ともあれ、水戸室内の演奏はやはり一級です。初めてのホールで音の調整も大変だったに違いないですが、さすがに名手揃い。今回は安芸晶子さんも潮田益子さんも今井信子さんもいなかったですが、有名どころが多数おられ、まさにミニ・サイトウキネンです。こんなオケを持つ水戸市民は幸せです。翻って新潟は・・。東響定期があるだけありがたいかな。またの来演を期待したいです。
(今度は是非サイトウキネンでも引き連れて来演願いたいなあ・・、というのが私の夢。)
(客席:2階Cブロック7-17、S席15000円) |