新潟市・東京交響楽団提携記念演奏会

   カルミナ・ブラーナ

   1998年10月24日,新潟市民芸術文化会館コンサートホール

     曲目:デュリュフレ:アランの名による前奏曲とフーガ
             (パイプオルガン:吉田 恵)
        (休憩)
        オルフ:世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」

     指揮:秋山和慶
     管弦楽:東京交響楽団
     独唱:森川栄子(S)、五郎部俊朗(T)、牧野正人(Br)
     合唱:祝祭合唱にいがた東響コーラス、新潟市ジュニア合唱団
     語り:平幹二郎
     演出:実相寺昭雄


 この度新潟市に新しいコンサートホールが開館した。この開館記念コンサートである。ホールはパイプオルガンを備えたアリーナ型である。これまで新潟市内にはオーケストラの公演を行える所は新潟県民会館くらいしかなく、あとは中小のホールである。近年の地方のホールブームに乗り遅れた感はあったが、ようやく他の地方中核都市並みになったかなというところ。ホールの形態には議論はあり、自称文化人という人が文句を付けていたが、まずはできてひと安心。ホール内は明るい色調で東京のサントリーホールのような重厚さはない。前の人の頭がじゃまにならないのはいいが、座席・階段はやや急すぎる。2階席、3階席の最前部は手すりの下が解放されているのでちょっと怖い。物を落としたら1階の人を直撃しそう。実際パンフレット類を落としている人もいた。斬新なデザインかもしれないが、ちょっと一工夫欲しかったかなという印象。音楽仲間の間では、階段で転落する人の第一号はいつでるかな、というのがもっぱらの話題。とまあ設計上の気になる点はあるが、音響面も含め今後改善されることと思う。ホールの今後の活用がまた問題だが・・。
 いずれにしても無いところからは何も生まれない。今新たな出発である。音楽とスポーツの都市宣言を30年も前にしているくせに、立派なホールも無ければスポーツ施設もないという状況がずっとであった。ワールドカップ開催に向けてスタジアム建設が始まろうとしているが、未だプロ野球公式戦を呼べるような満足な球場もない。いつまでみすぼらしい鳥屋野球場をほっておくのだろうか?

 さて、話は横道にそれてしまった。コンサートの話に戻そう。1曲目は専属オルガン奏者である吉田 恵によるパイプオルガン演奏である。演奏もさることながら、曲を私は知らないし、また聴き応えする曲でもないので、少々退屈してしまった。このホールのパイプオルガンのお披露目であるのだから、もっと聴き映えのするJ.S.バッハあたりのなじみ深い曲でも選択すればいいのになあと勝手に思っていた。残念ながら、オルガンの良さを味わうことはできなかった。
 休憩を挟んでいよいよカルミナ・ブラーナである。今を去ること20数年前、新潟県民会館でベートーベンの第九を初めて聴いた。たしか某コーヒー会社主催の一般市民によるコンサートであり、最近亡くなられた石丸寛の指揮だった。そのとき人間の声こそ最高の楽器に違いないと実感し、オーケストラの他に声楽・合唱が大活躍のオルフ作曲のカルミナ・ブラーナも是非生で聴きたいと長く思っていたところであった。東京でも度々演奏されるような曲ではないし、新潟で聴けるということで、演奏のできは別にして聴けたということだけで満足であった。舞台装置が工夫され、ステージから2階客席への階段が仮設され、語りの平幹二郎が行き来していた。照明による演出も秀逸。平幹二郎の好演もあって、なかなかいい演奏であったと思う。2階左側の席であったが、ちょっとホールの響きが堅いかなという印象。好演した一般公募で編成された新潟東響コーラスの今後の発展にも期待をもたせた。公演はテレビ収録され、新潟地区だけダイジェストが放送された。やはりなかなかの名演であった。

 さてさて、12月にはワレリー・ゲルギエフ指揮キーロフ劇場管弦楽団のコンサートがある。新潟では知名度が意外にないのが心外だが、今最も旬である。アバド/ベルリンフィルなどよりスリリングな演奏が期待できるんじゃないかと個人的には思っています。これは是非聴くべきであり、全国の皆さんもいらしてください。また、春にはアマチュアの合同オケでマーラーの復活が演奏されます。やっと新潟で復活が聴ける! 開館記念にはぴったりだと思います。長年の夢がようやく叶い、今からワクワクしています。