クラシック音楽との出会い


 中学生頃、カラヤンの名曲集やイ・ムジチの四季のLPを聴いたりしたことはあったが、クラシック音楽を本格的に聴き始めたのは大学に入ってからのことである。高校では音楽を選択しなかったので、音楽の知識は中学までである。それも真面目に勉強したわけではない。そんな私が大学に入ってからクラシック音楽に目覚めてしまった。
 そもそもは教養の授業で単位を取りやすい音楽をとったということと、友人に音楽好きが多かったということがきっかけであった。音楽の授業は、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、メンデルゾーンとLPを聴くことがその内容であり、午後の一時、まどろみの時間を過ごしていた。ところが音楽を聴いているうちに、クラシック音楽の魅力にとりつかれてしまったのである。

 家庭教師のアルバイトで稼いだお金をLP購入につぎ込んで、石丸電気やツモリレコードに通っていた。とにかく音楽に出会うのが楽しく、様々な作曲家を聴きまくっていた。しかし、学生の身であり、買うLPはいわゆる廉価盤。1000円、1200円というシリーズが主体であった。ほかには安い輸入盤を捜して聴いていた。当時フィリップスの廉価盤というとハイティンク指揮のコンセルトヘボウ管弦楽団というのが多く、いまだにハイティンクというと安っぽいイメージを感じてしまう。

 このようにレコードを聴くのに夢中で、コンサートに行く余裕はなかった。多少のお金はあっても、コンサートに行くより、チケット代でLPを何枚かかった方がいいと考えであった。たまに行くコンサートというと、大学オケやアマテュアの演奏会。友人の親に県民会館関係者がいて、ときどき売れ残ったチケットがあるとただでコンサートに潜り込むことができたのは幸運であった。今振り返っても結構いいコンサートを聴くことができた。

 私が大学生だった当時、外来有名オケが意外にも多数来県しており、新潟県民会館で公演を行っている。今振り返っても豪華な顔ぶれである。例えば、1976年1月、アルヴィド・ヤンソンス指揮モスクワ・フィル(チャイコフスキー:フランチェスカ・ダ・リミニ、ヴァイオリン協奏曲、交響曲第6番)、1977年6月、ショルティ指揮シカゴ交響楽団(ベートーヴェン:交響曲第7番、第5番)、10月、ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィル(シベリウス:トゥオネラの白鳥・交響曲第7番、チャイコフスキー:交響曲第5番)、1978年5月、オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団(R.シュトラウス:ドン・ファン、ドビュッシー:海、ブラームス:交響曲第1番)、1979年6月、バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィル(ハイドン:交響曲第104番、マーラー:交響曲第1番ほか)、などなどである。いずれも歴史に名を残す巨匠たちが次々に来演しており、今考えても驚異的である。これら今はなき巨匠たちの生の演奏を聴けなかった、聴かなかったということは悔やまれる。いまさら悔やんでも仕方ないが。

 最近になって長らく実家の倉庫に預けてあったLPレコードを家に持ち込んだ。1枚1枚手に取るたびに、遠い若き日の想い出がよみがえる。


2007/8/5