皮質:灰白質(神経細胞体の集まり)、髄質:白質(神経線維のあつまり)
大脳皮質:神経細胞体が集まる:6層の層構造をなす
(1)前頭葉
中心前回:運動の中枢:運動ニューロンが集まっている(Betzの巨細胞)
運動性言語中枢(Broca中枢)、精神機能、その他:眼球運動など
(2)頭頂葉
中心後回:感覚の中枢、計算、書字
(3)側頭葉
聴覚、味覚、嗅覚中枢、感覚性言語中枢(Wernicke中枢)
記憶、記銘、感情、摂食、性行動:大脳辺縁系(側脳室周囲)
本能、情動:ほ乳類で発達、記憶の中枢:海馬
(4)後頭葉
視覚中枢
(5)大脳基底核(淡蒼球、被殻、尾状核)
運動の調整、筋緊張の調整
(6)内包
感覚路、運動路の神経線維の束
2.間脳
(1)視床
感覚神経の最後の中継核:ここから頭頂葉の感覚中枢へ
大脳皮質の活動性を維持、調節:網様体賦活系
運動の調節
(2)視床下部
自律神経の調節中枢:体温、水・電解質、脂質、糖質、睡眠、食欲
下垂体に線維連絡(間脳下垂体系)
3.中脳
感覚神経の伝導路(内側毛帯、脊髄視床路)
視覚聴覚の伝導路
運動調節に関わる神経核:赤核、黒質
脳幹網様体
脳神経核:動眼神経、滑車神経
運動神経の束:大脳脚
4.橋
感覚神経、運動神経の経路
脳幹網様体
脳神経核
5.延髄
脳幹網様体
血管運動中枢
呼吸中枢
感覚神経
脳神経核
運動神経:錐体交差(左右が入れ替わる):右脳→左半身、左脳→右半身
6.小脳
小脳半球、虫部
運動の調整、平衡機能の中枢
7.脊髄
頚髄、胸髄、腰髄、仙髄、尾髄
頚神経(8)、胸神経(12)、腰神経(5)、仙髄神経(5)、尾骨神経(1)
馬尾:脊髄から出た神経の束が馬のしっぽに似ている。
・間脳〜延髄を脳幹と呼ぶ。
・高等になるほど大脳皮質が発達している。
大脳半球優位性と利き手
言語機能:右利きの人は左大脳半球で行われる。
言語に関しては左が優位半球である。
(ただし、左利きの人は半数が左、半数が右)
左半球:言語に関する機能、容易に言語化できる対象の操作、情報処理
右半球:言語化できない対象に関する機能、抽象的概念
左右の半球がばらばらに機能しているのではない。
:脳梁を介して情報交換している。
2. 脊髄、脳幹のはたらき
反射の中枢
見る、聴く、嗅ぐ、味わう、触るという五感の感覚は、それぞれの経路を通って
大脳に入り感覚される前に、いろいろな反射活動を起こす。
脳の階層構造
脊髄→延髄→橋→中脳→間脳→大脳
大脳皮質を除去しても生存できる。
大脳がなくても間脳があれば感情を持つ。
中脳がなくても延髄が残れば、生命維持は可能。:植物人間
延髄がなければ呼吸も自分でできない:脳死(脊髄の反射は起こる)
3.反射
反射:大脳を経由することなく生じる、刺激に対する無意識的、自動的反応を言う。
脊髄レベルで起こる反射:脊髄反射
伸張反射:筋肉が伸展→縮め
例:膝蓋腱反射、アキレス腱反射
屈曲反射(逃避反射):危険があると手を引っ込めるなど。
脳幹レベルで起こる反射:脳幹反射
瞳孔反射(対光反射):眼に光を当てると瞳孔が縮まる。
瞬目反射:眼に危険があると眼を閉じる。
角膜反射:眼に触ると眼を閉じる。
その他:血圧、脈拍、呼吸、体温の調節も反射である
これらの反射の統合、調節を行っているのが大脳である。
4.神経系の基本構造
1. 神経細胞(ニューロン neuron)
神経細胞体にはたくさんの突起があり、樹状突起と呼ぶ。このうち1本は長く軸索突起
(axon)と呼ばれる。軸索突起は他の神経細胞とシナプスを介してつながり、情報伝達
が行われる。
有髄神経、無髄神経
軸索突起が鞘で覆われた(電線で言えばビニールの被膜)有髄神経と、鞘のない
無髄神経がある。この鞘は髄鞘(ミエリン)と呼ぶ。
髄鞘には切れ目があって、神経細胞の電気的興奮は、この切れ目間を飛ぶように
して伝わる(跳躍伝導)ので非常に早く伝わる。逆に無髄の場合は伝導が遅い。
2. ニューロンの補助、支持成分
髄鞘(ミエリン)を形成する細胞
末梢神経ではシュワン細胞、中枢神経では乏突起膠細胞(oligodendroglia)
神経膠細胞(グリア細胞):神経細胞を補助する細胞
星状膠細胞 astrocyte
乏突起膠細胞 oligodendroglia
小膠細胞microglia
3. 神経系のまとまり方
神経細胞があつまったところ:灰白質 皮質、基底核、神経核 などと呼ばれるもの
神経線維(軸索突起)のあつまり:白質
末梢での神経細胞の集まったところ:神経節
4. 髄膜:三層の膜からなる脳を覆う膜。
軟膜(柔膜):脳にを直接覆う薄い膜。
クモ膜:クモの巣状にソフトに脳を覆う膜。この膜の間(クモ膜下腔)に髄液が流れる。
硬膜:一番外側の頭蓋骨に接する堅い膜。
大脳鎌:左右の大脳半球を分ける硬膜の仕切り。
小脳テント:大脳と小脳を分ける硬膜の仕切り。
5. 脳室:脳の中にある髄液で満たされた空洞。脈絡叢があって髄液を産生している。
側脳室:左右の大脳半球にある。室間孔(モンロー孔)で第3脳室とつながる
第三脳室:左右の大脳半球間にあり、中脳水道を介して第4脳室につながる。
第四脳室:橋・延髄の背側と小脳の間にある。マジャンディ孔、ルシュカ孔という穴が
あって脳表面とつながっている。
6. 髄液:脳表、脳室を満たす無色透明な液体。
脈絡叢で血液より産生される。
脳室系を循環し、マジャンディ孔、ルシュカ孔から脳表に流れ出る。
脳表面や脊髄表面のクモ膜下腔を潤した後、クモ膜顆粒(絨毛)で血液中に吸収される。
この髄液の流れが障害されると、脳室に髄液がたまって、大きく拡大してしまう。
この状態を水頭症という。
7. 血管
大動脈→総頚動脈→外頚動脈
→内頚動脈→前大脳動脈
→中大脳動脈
→椎骨動脈→脳底動脈→後大脳動脈
ウィリス動脈輪:脳底部で左右の中大脳脈、後大脳動脈がつながりあって輪を形成。
静脈は静脈洞に集まり内頚静脈となって頭蓋外に出ていく。
5.末梢神経系
脳から出る脳神経と脊髄から出る脊髄神経に分けられる。
1.脳神経 cranial nerve :左右12対あって、番号が付けられている。
1.嗅神経 嗅覚:鼻粘膜嗅細胞→嗅球
2.視神経 視覚:視束→視交叉→上丘(中脳)→後頭葉
3.動眼神経 眼球運動:内転、上転、下転、斜め外上方
上眼瞼挙筋:上まぶたを上げる
瞳孔括約筋:瞳孔を縮める。
4.滑車神経 眼球運動:斜め外下方
5.三叉神経 顔面の感覚、咬筋の運動
三叉神経節を形成し、3本の枝に分かれる
第1枝 眼神経 額、眼周囲の感覚
第2枝 上顎神経 上顎部・頬部の感覚
第3枝 下顎神経 下顎部の感覚
6.外転神経 眼球運動:外転
7.顔面神経 顔面筋の運動
味覚(舌前2/3)
涙腺、顎下腺、舌下腺の分泌
8.内耳神経 聴覚:聴神経(蝸牛神経)
平衡感覚:平衡神経(前庭神経)
9.舌咽神経 舌後端、咽頭粘膜の感覚
舌後方1/3の味覚
咽頭筋の運動:嚥下
耳下腺の分泌
10.迷走神経 内蔵に分布する副交感神経
反回神経:声帯の運動
11.副神経 胸鎖乳突筋、僧帽筋の運動
12.舌下神経 舌の運動
2.脊髄神経:左右31対
頚神経(C):8対(C1-C8)
胸神経(Th):12対(Th1-Th12)
腰神経(L):5対(L1-L5)
仙骨神経(S):5対(S1-S5)
尾骨神経:1対
頚髄、胸髄、腰髄、仙髄から出た神経は、上から順に1, 2, 3, と番号が付けられている。
脊髄の前方から運動神経が出る。(前根)
脊髄の後方から感覚神経が入る。(後根)
脊髄を出た神経は、隣接する上下の神経が互いに連絡を取り合って神経叢をつくる。
さらにそこから末梢へとのびていく。
頚神経叢:C1−C4
腕神経叢:C5−8,Th1
腋窩神経(三角筋)
筋皮神経(上腕二頭筋)
正中神経(前腕屈筋、母指球、手掌感覚)
尺骨神経(固有手筋、尺側感覚)
橈骨神経(上腕、前腕伸筋、背側感覚)
胸神経:Th1−12
肋間神経
腰神経叢:L1−4
大腿神経(大腿伸筋、大腿前面の感覚)
閉鎖神経(大腿内転、大腿内側面の感覚)
坐骨神経叢:L4−5.S1−3
坐骨神経:大腿屈筋
総腓骨神経 浅腓骨神経:背屈、足背皮膚
深腓骨神経 下腿伸筋(背屈)
脛骨神経 下腿屈筋
腓腹神経
陰部神経叢 膀胱,肛門、外陰部
3.自律神経系
交感神経、副交感神経 ともに1度神経を乗り換える(神経節)
神経節の前を節前線維、後を節後線維と呼ぶ。
互いに逆の作用を持つ交感神経、副交感神経がバランスを取りながら
調節を行っている。
終末での伝達物質 交感神経:ノルアドレナリン、副交感神経:アセチルコリン
6.神経の興奮伝導のしくみ
神経の活動→電気的活動→活動電位
神経系の情報伝達:活動電位の伝導による。
膜電位:細胞内:K+の濃度が高く、Na+、Cl-の濃度が低い
−の蛋白質など多く、全体的にはマイナス(-90mV)
細胞外:Na+の濃度が高くK+は少ない。
Na+−K+ポンプ
Na+は細胞内から外へくみ出されるが、外から中へは通りにくい。
静止状態では、-90mVの電位差で平衡が保たれている。→静止膜電位
外からの刺激で、細胞内電位が-90mVからプラス方向へ上昇していくと、(これを脱分極)
ある臨界レベルに達すると、Na+イオンの透過性が一気に増大する(Naチャンネルが開く)。
それにより細胞外から細胞内へNa+が流入し、細胞内電位はさらにプラス方向へ傾き、Na+
はどんどん細胞内に流入するため、細胞内電位は一気に+50〜70mVに反転する。
これを活動電位と呼ぶ。これに少し遅れて、K+イオンの細胞内への流出が起こり、Na+
イオンの流入が非活性化し、細胞内電位は元に戻る。
Na+イオンの流入が一気に起こる臨界レベルのことを→閾値thresholdと呼ぶ。
膜電位の変化が閾値に達しなければ、活動電位は発生しない。
膜電位の変化が閾値を超えれば、一気に活動電位が生じる。
活動電位が発生するかしないか(興奮するかしないか)ふたつにひとつ。
→全か無かの法則all or none law
興奮した後は一時的に興奮性が低下する→不応期 (絶対不応期、相対不応期)
細胞膜の一点で活動電位が発生すると、興奮部より非興奮部へ電流が流れ(局所電流)、
周囲の脱分極をもたらし、脱分極させ活動電位は周囲へどんどん広がっていく。
筋肉の興奮→筋収縮も同様
有随繊維:跳躍電動 髄鞘の切れ目(ランビエ絞輪)を飛ぶようにして伝わる。
→伝導は早い
シナプス伝達
活動電位が神経末端に達すると、シナプス小胞から、神経伝達物質が放出される。
神経伝達物質が、レセプターに結合すると、イオン透過性が変化し、膜電位の変化を起
こさせる(シナプス後電位)これにより脱分極がおこると、活動電位を発生させる。
→これによってニューロンからニューロンへ興奮が伝えられる。
また逆に過分極させるとむしろ興奮を抑制することになる。
シナプス後電位:興奮性シナプス後電位、抑制性シナプス後電位
シナプス伝達の特徴
一方向性伝達
シナプス遅延:少なくとも0.5msの時間がかかる。
疲労:伝達物質の消耗
興奮と抑制:シナプスの種類による
運動神経終末→筋細胞への興奮伝達も同様の機序
:神経筋接合部(終板)