頭蓋内圧亢進(脳圧亢進)



 脳は頭蓋骨という限られた容積の閉鎖空間の中にある。何らかの脳の疾患、あるいは血腫、腫瘍などで「脳」の容積が増えたとき、頭蓋骨という閉鎖空間では圧の逃げ場がないので、中の圧力が高まることになる。この状態を頭蓋内圧亢進あるいは脳圧亢進と呼ぶ。頭蓋内圧亢進の状態が続くと障害部位以外も圧迫を受け、二次的に障害が及ぶ。これが死因となることが多い。
 手足でもけがをすればその部位が腫れたりむくんだりする。脳も同様であり、病変は何であれ脳が障害されるとその部位にむくみが生じる。これを脳浮腫と呼ぶ。

原因
 1.脳浮腫:脳梗塞、脳炎、脳腫瘍などによる。 「脳のむくみ」
 2.頭蓋内血液量の増加
   PCO2(動脈血中の炭酸ガス)上昇による血管拡張、脳静脈の閉塞 など
 3.脳脊髄液の増加:水頭症
 4.頭蓋内占拠性病変:脳腫瘍、頭蓋内血腫 など

症状
 頭痛、嘔吐
 乳頭浮腫(うっ血乳頭):眼底を見ると視神経の出口である視神経乳頭に浮腫が見られる。
 外転神経麻痺(圧迫による)
 血圧上昇、徐脈
 意識障害

脳ヘルニア
 圧が高まると当然ながら圧の低い方へ向かって脳が移動する。頭蓋内での病巣の位置によって圧の逃げ場は限られる。このように圧の低い方に向かって脳が移動することを脳ヘルニアと呼ぶ。

 1.テント切痕ヘルニア
   側頭葉が小脳テント(小脳と大脳の境にある硬膜)の所から脳幹を圧迫しながら落ち込む。
    →中脳の圧迫、動眼神経の圧迫
    →瞳孔不同、対光反射消失、意識障害
 2.大後頭孔ヘルニア
   小脳が大後頭孔から頭蓋外へ出て来る。
    →延髄の圧迫→意識障害、徐脈、呼吸停止

 いかなる原因であるにせよ、脳圧亢進→脳ヘルニアが死因となることが多い!

治療
 開頭減圧術(頭蓋骨をはずして圧を逃がす)
 脳圧降下剤(グリセロール、マンニトール)の点滴 など