1.老年痴呆 senile dementia
(アルツハイマー型老年痴呆 senile dementia
of Alzheimer type: SDAT)
病理:大脳皮質の高度な萎縮。組織学的には老人斑、アルツハイマー原線維変化がみられる。
症状:65歳以上の発症。65歳以下に発症するものはAlzheimer病として区別するが本質的な違いはない。記憶障害(近時記憶から障害)、人格変化、見当識障害、感情障害、幻覚・妄想などを呈する。
2.アルツハイマー病 Alzheimer disease
病理:大脳皮質の萎縮、老人斑、アルツハイマー原線維変化等が老年痴呆より高度にみられる。 症状:40〜50歳代で発症。女>男。記憶障害、人格障害、失行・失認、見当識障害、反響言語
(同じ単語を来る返す)、語間代(同じ語尾を繰り返す)、鏡症状(鏡に映った自分が分からない)、
筋緊張異常、歩行障害、原始反射、oral tendency(汚物を食べる)、失禁、ミオクローヌス、
振戦等を示す。
*家族発症する例もある
家族性アルツハイマー病
常染色体優性遺伝、1,14,19,21番染色体に遺伝子座がある家系が報告されている。
最近の研究の進歩
老人斑
アミロイド細線維からなる。(アミロイドβ蛋白)
現在このβ蛋白がどのようにして産生されているか研究中。
その他、α1-アンチキモトリプシン、アポ蛋白Eなども沈着していることが分かり、この研究も
進んでいる。
アルツハイマー神経原線維変化
1対のねじれた細線維(Paired helical filament:PHF)からなる。PHFには、異常なリン酸化を
受けたタウ蛋白やユビキチンが存在する。これらがどう細胞死と関連するか研究中。
アミロイド・アンギオパチー
脳血管にアミロイドが沈着している。アミロイド沈着機序が研究中。
危険因子:加齢(高齢ほど多い)、性(女>男)、人種・生育地(欧米>日本)、
家族歴、頭部外傷、アルミニウム、病前性格(内閉型、感情型、粘着型)、
ライフスタイル(消極的)、アポ蛋白E4
3.ピック病 Pick disease
病理:側頭葉、前頭葉の強い萎縮。神経細胞脱落とグリオーシス、ピック細胞。
症状:頻度は少なく、アルツハイマー病の1/3以下。男>女。40〜50歳代に徐々に始まる。
病初期より特徴的な人格障害(非常識的、反社会的)、初期は記憶力は保たれる。自己中
心的な欲望にそのまま従った社会性の失われた行動(欲動的脱制止)、滞続言語。
4.進行性ミオクローヌスてんかん
progrssive myoclonus epilipsy:
PME
ミオクローヌスとてんかん大発作を主症状とし、進行性に精神機能の荒廃、運動機能の障害をきたすもの。
Lafora型PME
神経細胞内にLafora小体がみられるもの。常染色体劣性遺伝。
脂質症型PME
Neuronal ceroid lipofuscinosis:dolichol代謝障害
Sialidosis:α-neuraminidase欠損
Gaucher病:β-glucocerebrosidase欠損
変性型PME
Unverricht-Lundborg病:バルト海沿岸にみられるPME。
歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA):若年型はPME示す。
ミトコンドリア脳筋症:MERRFはPME症状を示す。
5.正常圧水頭症 normal pressure hydrocephalus: NPH
髄液圧正常で脳室拡大があり、臨床的に痴呆、歩行障害、尿失禁を示すもの。脳表クモ膜での髄液吸収障害のため髄液流のうっ滞が生じ脳室拡大、大脳の機能障害を起こす。脳室シャント手術が有効。
1.脊髄空洞症 syringomyelia
髄液が第4脳室からクモ膜下腔へ排出される機序の障害による。第4脳室と脊髄中心管が交通しているため、中心管への圧が高まり、中心管が拡大して空洞となる。後頭蓋窩の先天的な発達障害によるものが多い。空洞は頚髄下部〜胸髄に多い。空洞周囲にはグリオーシス(グリア細胞の増殖)がみられる。
症状としては、空洞の存在部位に相当する運動麻痺、感覚障害を示すが、解離性感覚障害が特徴。(空洞は脊髄中心部に存在するため、脊髄中心部を通って対側に向かう温痛覚は障害されるが、後索に行く深部覚や振動覚は障害されない。)
その他、外傷や脊髄腫瘍、脊髄クモ膜炎等によって二次的に空洞形成を起こすこともある。
延髄空洞症 syringobulbia
脊髄空洞症と同様の機序で延髄に空洞を形成したもの。この場合は下部脳神経核の障害により、構音・嚥下障害、顔面の解離性感覚障害等を起こす。