1999年 片貝まつりを振り返って

(四尺玉: 1999/9/10)

 今年も片貝まつりが終わって、いよいよ収穫の秋を迎える季節になった。今年も天候に恵まれ、2日間とも残暑のなか順調に終了した。昨年2日連続で失敗した4尺玉も、2日とも打ち上げに成功した。片貝煙火工業の皆さんもほっとしておられることだろう。まずはメデタシというところ。
 今年はプログラムに偏りがあって、大会本部の皆さんは大変苦労されたと伝え聞いた。同期会の花火が10日に集中したのである。そのため、9日に2尺、3尺を集めたのだろうか。できれば2日間とも見に行きたいところだったが、仕事の関係で今年は10日のみ見に行くことができた。

 仕事を早めに切り上げて職場を18時過ぎに出る。コンビニで食料を仕入れ、買ったパンをかじりながら片貝へと向かう。
 19時前だと小千谷市街も渋滞が少なくスムーズに走れる。いつもの関越道下の農道に車を止める。ここからだと歩いて10分程で浅原神社に行けるので、意外な穴場である。たわわに実った稲穂を見ながら祭囃子の方向へと歩く。ちょうど時刻は19時半、打ち上げ開始だ。打ち上げ開始のアナウンスとともに、豪快な尺玉の炸裂音。肌でも感じるこの音がたまらない。
 片貝の通りに出るとものすごい人出。露天を覗きつつ人垣をかき分けながら浅原神社へ。さっとお参りをして右手の桟敷席に向かう。
 境内の無料観覧席はぎっしりで入り込む隙はない。もっともこの場所は境内の木々が邪魔になって花火の全貌は見えないのだが。さらに人をかき分け有料桟敷席方向に向かう。
 祭囃子の笛・太鼓、若者たちの元気なかけ声、飛び跳ねながら山車が練り歩く。この熱気、これが片貝だ。一発一発に込められたメッセージが読み上げられる。毎年かわらぬいつものアナウンス嬢の声が会場に響く。コミカルなメッセージもあり、これがまた楽しい。他の花火大会では何気なく上げられている単発花火も、片貝では重要な意味を持っているのである。
 単発といっても片貝では尺玉が標準であり、近くで見る尺玉は、遠くで打ち上げられる3尺、4尺に負けない迫力がある。

 神社裏の桟敷席脇でしばし観覧する。尺玉は頭上に上がり、ほとんど真上に近いので、辺縁は垂直に落ちてくるように見える。桟敷上では寝てみないと首が疲れてしまう。デジカメに記録しようとしたが、近すぎて収まらない。よほどの広角レンズでないとこの位置では撮影は難しい。
 ということで、写真撮影は適当に切り上げ、花火を楽しむ。なかなかスターマインが上がらないが、尺玉の連発は迫力があって、それなりに結構楽しめる。奉納アナウンスを聞きながらなので、花火の間隔も気にならない。スターマインが飽きるほど上がる長岡では、単発花火をここまで味わうことはないだろうなあ、とふと思う。

 さて、プログラムが進むにつれ、お立ち台に山車が次々に集合してくる。軽やかな祭囃子とかけ声、見る方も心ウキウキである。山車はそれぞれ趣向を凝らしているが、50歳の永遠会の山車が一番目立っている。巨大なミラーボールがキラキラ光り、シャボン玉が噴き出している。
 そして20時50分、若杉会の還暦の大スターマインである。花火番付のコメントは、「祝還暦 先掛十号 物故同級生追善供養 会員各位の健康祈願 豪華絢爛 万里に轟く還暦の華 大仕掛大スターマイン」。「若杉会の皆様お待たせしました・・・」と場内アナウンスもいささか興奮した口調である。片貝花火は4尺がメインではない。還暦の花火こそメインなのだ。それにしては例年より早い時間帯であるが。プログラム編成に苦労があったのだろう。
 先掛けの花火とともに打ち上げ開始。はじめはカラフルであるが、あとはお決まりに金色一色。まさに「還暦の華」である。次から次へとこれでもかと上がる金冠尺玉の連発。これがないと片貝まつりは締まらない。思わず感動の涙が滲んでしまった。「若杉会万歳」と心の中で叫ぶ。
 余韻さめやらぬ中、筒割れした21時の3尺玉にがっかりしつつ、誇らしげに退場する若杉会の皆さんとともに桟敷席から退散した。退場のときのお囃子も哀愁に満ちて趣深い。

 雑踏を離れ、今度は民家がとぎれた辺りから鑑賞する。打ち上げのアナウンスも風向きによってはちゃんと聞こえる。花火を鑑賞するならちょっと離れた方がいい。写真撮影したいなら離れないとだめである。
 噂の永遠会の350万円の大スターマインも見事であった。2発目の3尺は無事成功。そろそろ車に急げねば。42歳厄年満願の酉戍会の花火を見つつ車に向かう。そう言えば自分も厄年だったなあと感慨に耽る。成人愛郷会の花火を背中で見ながら農道を行く。22時、4尺玉が無事上がったのを見届けて、車のエンジンをかける。

 例年はこのタイミングだと渋滞に巻き込まれないのだが、今年は人出が多かったのか、抜け出すのに時間がかかってしまった。その結果22時20分の最後のスターマインを車窓から眺めることができた。ちょうど打ち上げ終了を待っていたかのように、雨が降り出した。
 土砂降りの中、車を走らせながらふと考えた。不況なのかな・・。スターマインが少ないように思えたし、スターマインの球数もちょっと減っているのでは・・。ちょっとだけ寂しさを感じた。正直言って、3尺玉はやっぱり長岡の方が見栄えがするし、4尺玉は大きいけれどきれいとは言えない。しかし、頭上で炸裂する尺玉を味わうのが片貝の楽しみなんだろうなとあらためて感じた。やっぱり自分で上げなきゃねえ。よく考えれば、他人が奉納した花火を見させてもらって不平を言うのも失礼な話なのだ。

 まだ片貝花火を見たことのない人、片貝花火の良さが分からない人は、是非浅原神社に足を運んで下さい。祭りの熱気を肌で直に感じると、きっと片貝の虜になることでしょう。遠くから眺めるだけでは本当の良さは分かりません。花火番付も是非買って下さい。

 片貝まつりとともに夏が終わり、いよいよ秋です。祭りの翌々日、片貝を通ったら、稲刈りが始まっていました。私にとって今年最大の楽しみが終わりました。来年また片貝に行けることを楽しみに、また1年頑張ろうと考えているこの頃です。