5. 筋ジス医療の現状
昭和39年3月、全国進行性筋萎縮症児親の会(のちの筋ジス協会)が結成され、 同年5月、厚生省は進行性筋萎縮症対策要綱を定め、全国の国立療養所に進行性筋萎縮症病棟(筋ジス病棟)
を整備する計画を発表しました。
まず最初に西多賀、下志津病院に各20床ずつ開設され、当院では昭和42年に開設されています。 現在では、全国の国立療養所27施設で、合計2350床が整備されています。
平成6年2月の全国調査では、入院筋ジス患者総数は1578人でした。 病型別の内訳は、Duchene型 59%、Becker型5%、筋強直性
14%、肢帯型 12%、顔面肩甲上腕型4%、 先天型6%となっており、また年毎に入院患者数は減少傾向にあります。 これは、遺伝相談や遺伝子診断が行われるようになり、新規発生が減少したほか、出生率の低下、
また日本社会の成長により、障害児、障害者を社会で受け入れる余裕ができ、在宅生活する例が増加したためと推測されます。
また、全身管理の進歩で、患者の延命化が図られており、入院患者の高齢化、重症化が進み、 人工呼吸管理を受けている患者の割合は約26%となっています。
一方、同じ調査での外来筋ジス患者(在宅患者)総数は2321人であり、Duchenne型38%(875人)、 Becker型9%(214人)、筋強直性16%(379人)、肢帯型12%(268人)、顔面肩甲上腕型6%(143人)、
先天型8%(184人)、その他 11%(258人)でした。また、このうち66人(うちDMD患者が52人) が在宅人工呼吸管理を受けていました。さらに、在宅DMD患者の60%以上は、将来においても入院はした
くないと希望しており、在宅医療をいかに維持・推進していくかが問題です。このためには、病院に 在宅医療支援部門を設置し、専任看護婦、PT、OT、ソーシャルワーカーなどをおくことが必要であり、
緊急時用の入院ベットの確保、病院とかかりつけ医(ホームドクター)、市町村、保健所等とのネットワーク 作りを行うことが重要です。
この問題については、筋ジスに限らず、他の神経難病などにも共通する課題ですが、整備のための人的・ 経済的問題があまりにも大きく、今後の医療のあり方を根本的に再検討する必要があります。