(5)今後の治療の動向
根本的治療には遺伝子治療を待たなければなりませんが、現実はごく一部の遺伝病での臨床応用が始まったにすぎません。ジストロフィン遺伝子は巨大であり、患者筋に直接遺伝子を導入するにしろ、患者培養筋芽細胞に遺伝子導入して自己筋に移植するにしろ、アデノウイルスやレトロウイルスを用いる方法では組み込める遺伝子の大きさに制限があります。いかにして効率よく細胞内に遺伝子を導入するか難問が山積みです。
そこで遺伝子治療の開発に並行して、筋の細胞膜を安定させ、筋の崩壊をできるだけ少なくするような薬剤の研究・開発も今後継続していかなければなりません。さらに、死因となる心不全、呼吸不全の対症的治療法の研究、進行を遅らせるための運動療法、少しでも快適な療養生活が送れるように移動機器、介護機器の開発なども地味ながら重要な研究課題です。