![]() ![]() ![]() ![]() 振り返ると本土の山々がきれいに見渡せ、海の向こうという感じがしない。少し歩いてみるが、すぐ前に発電所、役場があるだけで、何もない。土産物店も役場の前に看板の字も薄れたひなびた店が1件あるのみ。役場の右手に茶色い壁のひときわ目立つ真新しい建物があるが、ここが目的の温泉である。とにかく他には何もないので、迷うこともない。 ![]() 行く当てもないし、ともかく温泉に入ろうと温泉に向かった。船を型どった看板がおもしろいが、港に面した側は実は裏で、反対側に玄関がある。建物をぐるりと回って玄関へ向かう。下足棚に靴を入れ、スリッパに履き替える。受付で料金を支払う。タオルなしで500円(小人200円)であるが、これは標準的であろう。 館内は、右手に広いロビーがあり、テーブルや椅子、ソファがたくさん置いてあってくつろぐことができる。名産品の展示もある。休憩用の大広間もあって、寝転んでいる人たちがいた。冷凍スナックや飲み物の自販機はあるが、食堂はない。 館内左手に浴室がある。脱衣場は籠の他、鍵付きのロッカーがある。本来コイン式だったようだが、無料で使えるようコイン投入口にテープが貼ってあった。掲示された温泉の効能書きで泉質を確かめる。ナトリウム・カルシウム-塩化物泉か。こんな小さな島だから、少し掘れば海水がしみ出てくるんじゃ ![]() 湯は無色透明無臭。やっぱりね、と思いながら飲んでみる。苦い!こんな苦い温泉は初めてではないだろうか。塩味もするのだが、とにかく苦いのである。湯上がりに成分表を再確認する。掲示によると、源泉名は、粟島の湯。泉質は、ナトリウム・カルシウム-塩化物泉。源泉温度は、32.7℃。主な成分は、Naイオン4570mg/kg、Caイオン3535mg/kg、Mgイオン573.2mg/kg、Kイオン39.3mg/kg、Srイオン28.3mg/kg、塩素イオン13690mg/kg、硫酸イオン1771mg/kg、炭酸水素イオン41.5mg/kg、臭素イオン37.2mg/kg、メタ珪酸20.3mg/kg、遊離二酸化炭素18.2mg/kgなどで、ガス性除く成分総計は24310mg/kgと成分豊富な高張性の湯である。ナトリウムイオン、カルシウムイオン、塩素イオンが非常に多いので、泉質名を規定するmval%では少なくなってしまうが、絶対量としてはマグネシウムイオン、硫酸イオンがかなり多いことがわかる。正苦味泉としての特徴が現れているんだろうなあと納得した。地下1500mから湧出とのことであり、化石海水由来の温泉だと想像するが、湯の透明さ、苦さは独特である。この点、特徴ある温泉であり、ここまではるばる海を渡ってきた甲斐があったとひとり喜んでいた。 ![]() ![]() ふーふーいいながら食べ終わると、ちょうど時間となり、高速船に乗る。料金は、3690円とほぼ倍の値段。全て椅子席で、冷房の効いた船内は快適である。さすがに高速であり、島影がどんどん遠くなる。うねりもあるがものともせずにとばしていき、揺れもほとんどない。55分であっという間に岩船港に着いてしまった。値段分はあるなと納得した。快適さは全く違う。 10時に岩船港を出て、14時25分に帰ってきてしまった。温泉だけ入って帰ってくるのは私ぐらいかな。どうせなら、一泊くらいすべきなんだろう。島を一周する遊覧船もあるし、レンタサイクルも用意されている。普通の人はやっぱりしっかり観光してこなきゃね。 粟島の観光パンフレットがおもしろい。「なんにもないを、楽しむ島。」というのがキャッチフレーズ。インターネットじゃ、この島の空気は味わえない。とキャッチコピーは続く。まさにその通り。宿泊は民宿かキャンプ。素朴さを是非味わいましょう。 |