声楽や合唱には全く疎い私ですが、世界最高のアカペラ声楽アンサンブルと称されるタリス・スコラーズの名前は、この私でも知っています。
タリス・スコラーズは1973年にピーター・フィリップス氏によって結成されました。フィリップス氏は1953年の生まれですから、20歳という若さでこのようなアンサンブルを結成したというのは素晴らしいですね。以後50年に渡ってこのアンサンブルを率いて活動し、今回のツアーは結成50周年記念となっています。
新潟には、2015年6月に来演していますが、そのときは聴きに行けませんでしたので、今回は是非聴きたいと思っていました。
しかし、平日の水曜日の夜の公演であり、行けるかどうかわかりませんでしたが、予定を考えないまま、チケットを買ってしまいました。案の定、今夜は所用が重なり、どうしようかと最後まで悩みましたが、思い切って出かけることにしました。ただし、今日中に済ませるべき雑務があり、残念ではありますが、前半だけ聴いて帰ることにしました。
梅雨空の鬱陶しい天候の下、仕事を早く切り上げて、りゅーとぴあへと向かいました。職場を出るときには小雨が降っていましたが、中央区に入る頃には雨は上がっていました。開演時間が迫っていましたので、白山公園駐車場に車をとめて、急いでりゅーとぴあに入り、すぐに入場しました。
ロビーではCD販売が行われていて、買い求める客で賑わっていましたが、売れ行きは良いようで、既に売り切れのCDもありました。
客席に着きますと、客の入りとしましては、それなりの入りというところでしょうか。もう少し混雑するかと思ったのですけれど、大都市では満席になるべき公演ですが、地方都市の新潟ではこんなところでしょうか。
開演前のアナウンスで、終演後に、CD購入者には、ピーター・フィリップス氏ほかによるサイン会を開催するとの案内がありました。なかなか、サービスしてくれますね。
受付で渡されたプロフラムは、薄っぺらな紙の冊子でしたが、内容は詳しく読み応えがありました。別冊で歌詞の対訳が付いていて良かったです。
プログラムに目をやりますと、今回の日本ツアーは、6月30日のびわ湖ホールに始まり、福岡シンフォニーホール、新潟、東京オペラシティ、ミューザ川崎と、全国で5公演開催され、新潟はちょうど中間の3公演目に当たります。
「結成50周年 日本ツアー」と題された公演は、Aプログラムは「合唱団結成50周年プログラム」で、これまでの50年間に歌ってきた曲の中から様々な曲が選ばれています。ニコ・ミューリーやアルヴォ・ペルトなどの現代作品も選ばれています。
Bプログラムは「システィーナ礼拝堂からのひらめき」というテーマで、パレストリーナのミサ曲を中心に、システィーナ礼拝堂の聖歌隊のために書かれた曲が選ばれています。
このアンサンブルの代表曲であるアレグリのミゼレーレは両方のプログラムで歌われます。新潟は川崎とともにAプログラムです。
AプロでもBプロでも知らない曲ばかりですが、この手のCDは何種類か持ってますので、きっと聴いたことがある曲もあるのかもしれません。
開演時間となり、合唱メンバーと指揮のピーター・フィリップス氏が登場しました。女声6人(ソプラノ4人、アルト2人)、男声4人(テノール2人、バス2人)の総勢10人による声楽アンサンブルで、指揮者の前に、円弧状に1列に並びました。2人に1台ずつ譜面台が置かれていて、曲毎に楽譜を持ち替えていました。
このような合唱曲には疎い私ですので、曲ごとの感想は述べられません。正直言ってみな同じように聴こえてしまうのですが、アカペラの素晴らしさを堪能し、人間の声こそが最高の楽器であることを知らしめられました。
残響豊かなコンサートホールが、礼拝堂になったかのようで、天から降り注ぐような複雑極まりない合唱に、夢見心地になりました。
心の中の雑念は消え去り、汚れ切った私の精神が浄化されるようでした。ひとりひとりが素晴らしい声楽家であり、それが10人集まってのアンサンブルはこの上ないものでした。
休憩後の後半には、タリス・スコラーズの知名度を上げた十八番ともいえるアレグリのミゼレーレが歌われましたが、残念ながら前半だけで退席しましたので、聴けなかったのが残念でした。聞くところによりますと、3階席後方やオルガン前からも歌われて、立体的なサラウンド効果もあって素晴らしかったそうです。
楽器は何も加わらない人間の声だけでのコンサートでしたが、極上の音楽に酔いしれました。途中退席した私が言うのもなんですが、もっと多くの人に、この素晴らしさを味わってほしかったですね。
(客席:2階C5-11、S席:¥5000) |