2024年度最初の東京交響楽団新潟定期演奏会です。昨年度最後の第135回新潟定期演奏会は2023年12月3日でしたので、実に半年以上も開催がありませんでした。東響のスケジュールもあって、こうなったものとは思いますが、あまりにも期間が空きすぎであり、大きな問題として考えるべきかと思います。
さて、今回の指揮者のドミトリー・マトヴィエンコは、ベラルーシ出身で、2021年のデンマーク・ニコライ・マルコ国際指揮者コンクールで第1位と聴衆賞を獲得したそうです。
ロシアで研鑽を積み、ヨーロッパ各地で客演を重ね、2023年5月にはローマ歌劇場でイタリアでのオペラ・デビューを果たしました。今年1月にはダラス響でアメリカデビューし、今回の東京交響楽団との共演が日本デビューだそうです。今日は昨夜のサントリーホールでの第721回定期演奏会と同じプログラムです。
今回は後半の「ペトルーシュカ」がメインプログラムですが、当初は前半にツェムリンスキーの交響詩「人魚姫」が演奏されることになっていて、個人的にはこちらの方が魅力的に感じていました。
「指揮者のやむを得ぬ事情と強い要望」により、前半はラヴェルに変更されました。でも、かなり前から曲目を発表しておきながら、今年の2月末になって急遽曲目変更したのはなぜなんでしょうね。深い事情があるんでしょうけれど・・。
ということで、昨年度から公演回数が5回に減り、特典が随分と減ってしまってお徳感が少なくなりましたが、今年度も東響新潟定期演奏会の会員を更新し、新年度初めての演奏会に臨むことにしました。
今年度からは、これまでの開演前のプレトークのほかに、定期会員限定で、終演後にホワイエで、楽団員が参加しての40分程度のアフタートーク(定員100人)が開催されるそうです。お金のかからない企画は考えているようですね。
なお東京交響楽団は、新潟定期演奏会としては昨年12月3日以来ですが、その後12月31日の「りゅーとぴあ
ジルベスターコンサート2023」、1月14日の「ドリーム・キャラバン2023」、そして5月26日の「ジョン・ウィリアムズ大作戦!」で新潟に来られており、私としましては、3週間ぶりの東京交響楽団となります。
今週は真夏の暑さが続き、昨日は新潟市内でも秋葉区では35℃超えの猛暑日となりました。今日は夜から雨の予報が出ており、雲が広がって日差しはさえぎられてはいますが、暑さは厳しい日曜日になりました。
本来であれば、13時からの東響ロビーコンサートを聴くところなのですが、心身の疲労がたまっていましたので、十分に休息をとり、17時からの本公演に備えることにしました。
昼過ぎから雲が次第に厚くなり、天気予報よりかなり早めに、15時過ぎから雨が降り出しました。雨は次第に強くなりましたが家を出て、りゅーとぴあへと車を進めました。
いつもの白山公園駐車場は満車でした。今日は県民会館で16時開演の「熱帯JAZZ楽団」の公演が開催されているほか、イベントが重なっていたためと思われました。
陸上競技場駐車場に車をとめて、雨が降る中、傘をさして急ぎ足でりゅーとぴあ入りしました。既に開場されており、私もすぐに入場しました。
ホワイエで定期会員の特典のお菓子を受け取り、客席に着きますと、ちょうどプレトークが始まる時間でした。榎本さんが出てきて、東響団長の廣岡さんをステージに迎え、今日のプログラムのペトルーシュカについて、そしてラヴェルについての解説がありました。ラヴェルの作品のオーケストラ演奏の難しさなど興味深かったです。
恒例の演奏者の紹介としては、ペトルーシュカでピアノを弾く高橋優介さんの紹介がありました。東響の団員ではないですが、ピアノが必要な曲で客演しているそうです。
団長への質問コーナーでは、左利きの人の弦楽器演奏についての話や、演奏会前のリハーサルについての話がありましたが、今回の定期演奏会に際しては、5時間の練習を3日間したそうです。
その後に榎本さんから終演後のカーテンコールでは、写真撮影可能であることや、会員限定のアフタートークの紹介がありました。新潟でも、東京と同様にカーテンコールでの写真撮影ができるようになったのは素晴らしいですね。
さて、ステージを眺めますと、ステージいっぱいにびっしりと椅子が並べられていました。弦楽器の並びは、ヴァイオリンが左右に別れる対向配置で、16型の大編成です。
右側にはハープが2台、ピアノ、チェレスタが並び、チェレスタを半分にしたような見慣れない楽器もありました。ジュ・ドゥ・タンブルでしょうか。
客席を眺めますと、最近の定期演奏会同様の入りでしょうか。決して良い入りとはいえず、1階席前方の左右の空席が目立ちました。今年度も定期会員の増加には至らなかったように思いますが、定期会員の特典が乏しくなりましたので、仕方ないところでしょう。
開演時間となり、拍手の中に団員が入場。全員揃うまで起立して待ち、最後にニキティンさんが登場して大きな拍手が贈られ、チューニングとなりました。弦5部は、私の目視で
16-14-12-10-8 です。チェロは、主席の伊藤さんの横は、客演首席の笹沼さんです。
指揮のマトヴィエンコさんが登場して、1曲目はラヴェルの「道化師の朝の歌」の管弦楽版です。ピアノ曲集「鏡」の第4曲を、スペインをテーマとするバレエ公演のために、ラヴェル自身がオーケストレーションした曲です。
弦のピチカートで始まり、ふくよかな弦楽の響きが美しく、そこに華やかな打楽器群と管楽器が加わり、カスタネットやタンバリンもにぎやかに、いかにもというようなスペイン風の明るい音楽が流れ出ました。
福士さんのファゴットの美しい長大なソロの後に不気味な空気が流れ込み、賑やかに、華やかにオケを鳴らして、色彩感に溢れるオーケストラサウンドに浸りました。
ステージ転換されて、弦が縮小されて12型となり、2曲目はラヴェルの組曲「マ・メール・ロア」です。5曲からなりますが、第1曲は、濱崎さん、相澤さんのフルートに吉野さんのクラリネットと、木管群の美しい調べにうっとりし、透明感のある弦楽に酔いしれました。
第2曲は小鳥が鳴き、伊藤さんのチェロ独奏も美しく、第3曲は、東洋風の響きで賑やかにオケを鳴らし、第4曲は、ゆったりと、のどかに歌い、クラリネットの美しさ、コントラファゴットの重低音、そしてニキティンさんのソロと、聴かせどころもたっぷりでした。
第5曲は、静かな弦楽合奏で始まり、木管が加わり、ニキティンさんとヴィオラの青木さんの掛け合いも美しく、繊細かつ壮大に曲を盛り上げて、大きな感動をもたらしました。
この前半を聴いただけでも、マトヴィエンコさんの素晴らしさ、東響の素晴らしさを実感できて、大きな満足感をいただきました。色彩感あふれるふくよかなオーケストラサウンドは至福の喜びを与えてくれました。この演奏を前にしますと、ツェムリンスキーからラヴェルに曲目変更されて良かったかもと感じさせられました。
休憩後の後半は、再び16型の大編成になりました。ピアノは中央の指揮者前に設置されていました。拍手の中に団員が入場。ニキティンさんは初めからステージに出ていて、全員揃ったところでチューニングになりました。
後半はストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」の1947年版です。ストラヴィンスキーの三大バレエの中で、この曲は録音以外ではなかなか聴く機会がなく、25年・136回にもなる東響新潟定期演奏会の歴史の中で、「火の鳥」は4回、「春の祭典」は3回演奏されていますが、「ペトルーシュカ」は今回が初めてになります。
マトヴィエンコさんが登場して演奏開始です。フルートに導かれて、華やかな音楽劇が開演しました。わざわざピアニスト名がクレジットされているように、高橋さんのピアノが大活躍し、東響が誇る管楽器の皆さんが、それぞれが抜群のパフォーマンスを発揮してくれました。クラリネットの超高音とチューバの低音の対比など聴き応えも十分。特にトランペット(新しく主席になられた方のようです)は神業の如く最高でした。
東響が総力を挙げての、息もつかせぬ管弦楽の饗宴に身を委ね、音楽の喜び、オーケストラの愉しみをダイレクトに味わうことができました。
マトヴィエンコさんが創り出す音楽は、光り輝くような色彩感にあふれ、重苦しさは全くなく、すっきり爽やか、切れのあるリズムは躍動感にあふれて気分爽快です。
マトヴィエンコさんの指揮に応えて、最高の音楽を創り上げた東響の皆さんに大きな拍手とブラボーを贈りたいと思います。今回からカーテンコールでの写真撮影が可能になりましたので、私も撮らせていただきました。
マトヴィエンコさんの日本デビューに立ち合い、これから大きく羽ばたくことを確信し、大きな満足感を胸にホールを後にしました。
今回の共演で終わることなく、これからも東響との関わりを末永く深めていただきたいと思います。終演時間は18時半と早かったですが、内容の濃い演奏でしたのでお腹いっぱいでした。
終演後にはアフタートークが開催されましたが、どんな話がされましたでしょうか。興奮と感動の演奏の後ということで、きっと盛り上がったことでしょう。
外に出ますと、雨雲は去っていて、空は明るく、暑いながらも穏やかな空気で満たされていました。隣の県民会館での公演もちょうど終演だったようで、多くの客が出て来られていました。
2つの公演の終演が重なって、帰宅を急ぐ人たちで駐車場を出るのも大変かと思われましたので、急ぎ足で陸上競技場駐車場へと向かい、無事に混雑前に出ることができました。
(客席:2階C*-**、S席:定期会員、¥6200) |