Noism X 鼓童 「鬼」
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2023年12月16日(土) 15:00 新潟市民芸術文化会館 劇場
Noism Company Niigata
太鼓芸能集団 鼓童
 
第一部
『お菊の結婚』
演出振付:金森穣
音楽:I.ストラヴィンスキー(録音を使用)
衣裳:堂本教子
出演:Noism0、Noism1
 ピエール(海兵将校):ジョフォア・ポプラヴスキー
 お菊(遊女):井関佐和子
 楼主:山田勇気
 楼主の妻:三好綾音
 楼主の息子:中尾洸太
 遊女達:庄島さくら、庄島すみれ、杉野可林、太田菜月
 若い衆:坪田光、樋浦瞳
 青年:糸川祐希
 ピエールの許嫁:兼述育見

(休憩)

第二部 
Noism×鼓童 『鬼』
演出振付:金森穣
音楽:原田敬子
演奏:太鼓芸能集団 鼓童
   小松崎正吾、吉田航大、木村佑太、平田裕貴、渡辺ちひろ、定成啓、中谷憧
衣裳:堂本教子
出演:Noism0、Noism1
 清音尼/鬼:井関佐和子
 役行者:山田勇気
 侍女/遊女/鬼:三好綾音、庄島さくら、庄島すみれ、杉野可林、
        太田菜月、兼述育見
 修行者/鉱山労働者/鬼:ジョフォア・ポプラヴスキー、中尾洸太、坪田光、
            樋浦瞳、糸川祐希
 鬼:金森穣
 

 2022年7月に初演されたNoismと鼓童の共演作品「鬼」が、早くも再演されることになりました。この公演は、新潟市をホームグランドとし、日本のみならず世界を視野にして活動を続ける舞踊集団・Noismと、佐渡を拠点として世界的に活動している太鼓芸能集団・鼓童が初めて共演し、新潟をテーマとして創作されたオリジナル作品「鬼」を上演するということで話題となり、新潟での3公演の後、埼玉で3公演開催され、その後は京都、名古屋。鶴岡で公演されて好評を博しました。
 新潟での3公演はすぐにチケット完売となり、追加席も発売とともに完売となる人気公演でした。私は3公演の中日の土曜日の公演を観に行って、その素晴らしさに感嘆し、今回の再演も是非とも観に行かねばと考え、チケット発売早々に購入して楽しみにしていました。

 今回の公演は、新潟で12月15日(金)・16日(土)・17日(日)の3公演開催され、その後は、2024年1月13日(土)・14日(日)に神奈川公演、1月20日(土)に岡山公演、1月25日(木)に熊本公演が開催されます。
 新潟公演の3公演のうち、初日は平日の17時開演ですので参加困難であり、17日は他の公演と重なって、これも困難です。ということで、今日の中日の公演を観に行くことにしました。
 しかし、実は今日も16時から石丸由佳さんとAPRICOTによるクリスマス公演があり、そちらにも興味があったのですが、カップルやファミリー層向けの公演に私のようなジジイが独りで観に行って、クリスマスを楽しむというのもはばかられましたので、「鬼」を選ばせていただいたというのが真相です。

 これから寒冷前線の通過により大荒れになり、明日は強い冬型になって大雪が予想されていますが、今日は気温が高く、過ごしやすい土曜日になりました。
 与えられた雑務をこなし、昼過ぎにりゅーとぴあへと向かいました。予報通りに天候は崩れだし、白山公園駐車場に着きますと、小雨がぱらつき始めました。

 急ぎ足でりゅーとぴあに入館し、インフォメーションで某コンサートのチケットを買い、開場とともに入場しました。ロビーには、「鬼」の音楽を作曲した原田さんの手書き楽譜が展示されていて、しばし見入りました。
 席に着いてこの原稿を書きながら開演を待ちましたが、次第に客席は埋まり、子供から高齢者まで年齢層は幅広く、ほぼ満席の客席は熱気に満ちていました。

 私の後方の席のオバサマ方の間断のないお喋りに苛立ちを感じるうちに開演となりました。前半は、ストラヴィンスキーの音楽による「お菊の結婚」です。
 波の音とともに場内が暗転し、左前方より白服のピエールがステージに上がって開演です。いかにも金森さんの演出らしい白壁のセットが照明とともに効果的に使用されました。
 4台のピアノ、打楽器アンサンブル、声楽(独唱+合唱)からなるストラヴィンスキーの音楽とともに、コミカルにも思える人形の動きで物語が進みました。最後は悲しい結末を迎えるのですが、歌詞は分からないものの、歌声と見事にシンクロする演技により、物語がスムーズに伝わってきました。
 初演時は音楽も物語も初めてでしたが、今回は再演ということで、前回より分かりやすく感じました。冒頭のピエールの出方など、前回と異なりましたし、初演時とは部分的に変更が加えられているようでした。演技そのものも再演ということで、ブラッシュアップされていたものと思います。ストラヴィンスキーの音楽も素晴らしく、あっという間の25分でした。
 緞帳が降りるとともに休憩のアナウンスがあり、拍手で好演を讃える間もなく、カーテンコールなしに休憩に入りました。

 客席はお喋りが予想されましたので、ロビー奥の長椅子に座ってこの原稿を書いていたのですが、オバサマグループが私の座っている長椅子に座り込んできて、私を押し退けるように圧力をかけてきました。いたたまれず席を立ちましたが、そのパワーには圧倒されてしまいます。

 さて、後半はいよいよ「鬼」です。場内が暗転してもお喋りを続けるオバサマ方に不快感を感じるうちに、開演となりました。
 ステージの左右の高い台の上に鼓童のメンバーがスタンバイし、無音の中にNoismメンバーが登場し、太鼓のハッとするような1打で物語が始まりました。
 原田敬子さん作曲によるオリジナル作品であり、通常の鼓童の公演では決して聴くことのない音楽です。各種太鼓のほか、銅鑼や笛、箏などの様々な楽器が駆使され、太鼓の演奏というよりも、パーカッショングループによる現代音楽の演奏と言うべきでしょう。
 Noismと鼓童とがせめぎ合って、PAも使用された大音響に圧倒され、音圧と振動が身体と心を揺り動かしました。Noismの動きと鼓童の動きを交互に見つめて、視覚的にも休む暇はありません。
 特に金森さんが登場して以降の群舞の素晴らしさに息を呑み、その圧倒的パフォーマンスに魅了されました。そして、静けさの中に「鬼」の物語は終わりとなりました。
 
 緞帳が降りて、大きな拍手が沸き上がり、スタンディングオベーションの中に中日の公演は終演となりました。初めて観た人は、新鮮な感動を得られたと思いますし、二度目の人も、初演時とは違った感動をもらえたものと思います。
 明日は新潟公演の千穐楽ですが、来月には神奈川、岡山、熊本公演が開催され、Noismの素晴らしさ、鼓童の素晴らしさを体感してくれるものと確信します。

 胸の中でくすぶるような感動とともに外に出ますと、小雨が降っており、早足で駐車場へと向かいました。帰り道には土砂振りの雨となりましたが、素晴らしい芸術に接して、心は晴れ晴れでした。
 

(客席:2階17-24、¥5000)