シン・ヒョンス ヴァイオリン・リサイタル
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2012年3月11日(日) 14:30  だいしホール
 
ヴァイオリン:シン・ヒョンス
ピアノ:佐藤卓史
 



ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番 ヘ長調 「春」 Op.24

サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ イ短調 Op.28

(休憩20分)

ミルシテイン:パガニーニアーナ

ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 Op.108

(アンコール)
クライスラー:レチタティーヴォとスケルツォ・カプリース
クライスラー:愛の悲しみ
マスネ:タイスの瞑想曲
 
 

 3月も中旬を向かえ、春めいてきたと思いましたが、今朝起きたら雪がうっすらと積もっていました。すぐに消えて、昼頃には過ごしやすくなりましたが、天気予報は雪マークが続き、気分は冴えません。

 今日は東日本大震災からちょうど1年の記念日です。これに関連して、震災復興支援のフェニックス・コンサートが新潟県民会館で開催され、新潟の音楽家たちが多数出演されます。チャリティ・コンサートですので、私も協力したいところなのですが、このコンサートと見事に重なってしまいました。
 フェニックス・コンサートの開催発表前から、このコンサートのチケットは早々に買っており、申し訳ないと思いつつ、こちらに参加させていただきました。

 韓国出身の期待の若手ヴァイオリニストということで、チケット完売間違いなしと踏んで、チケット発売とともにチケットを買っていました。しかし、実際の売れ行きは鈍っていたとのことで、ちょっと意外に感じました。それでも、ホールはそれなりの入りで、結果としては盛況だったものと思います。

 黒いドレスのシンさんが登場。長身でスリム。ピアノの佐藤さんより背が高いです。写真よりずっときれいで、うっとりしました。

 最初はスプリング・ソナタ。朗々と音量豊かに響くヴァイオリンの音色に驚きました。力強く、低音が良く響きます。高音はいぶし銀のごとく感じられ、刺激的でなく、耳に優しく響きました。緩急自在。落ち着いた演奏は若さを感じさせず、巨匠然とした印象すら感じさせました。その分軽やかさ、爽やかさは乏しく、濃厚な演奏でした。

 続くサン=サーンスはお見事。素晴らしいテクニックに息を呑み、情熱的な演奏に引き込まれました。1曲め以上に大きな拍手が贈られ、会場の皆さんも感激したものと思います。

 後半は赤いドレスに衣裳換えして登場。最初はヴァイオリン独奏でパガニーニアーナ。これまた息をつく間もないような圧倒的な演奏であり、聴きほれるばかりでした。

 そして圧巻は今日のメインのブラームスのソナタです。チラシではラヴェルのソナタになっていましたが、変更されました。ダイナミックで力強く、グイグイと押してきます。緩徐部ではゆったりと歌わせ、音楽に引き込まれました。
 ヴァイオリンの情熱的で、血沸き肉踊るような演奏に、ピアノも負けることはなく、火花が散るような丁々発止のせめぎ合いに、聴く方も興奮し、精神的高揚を感じました。

 アンコールは、ヴァイオリン独奏で会場を盛り上げた後、ピアノも登場して愛の悲しみをしっとり演奏。その後、今日は震災から1年の記念日ということで、シンさんがメモを見ながら日本語で挨拶した後、タイスの瞑想曲を情感豊かに演奏。追悼の意味があるものと思いますが、心に染みる演奏でした。

 噂には聞いていましたが、期待以上の演奏に驚きました。まだ若いものと思いますが、完璧なテクニックに裏打ちされた、力強く、情熱溢れる演奏は、驚きを感じます。その激しい演奏に、弓が何度か切れましたが、引きちぎる姿もかっこ良かったです。
 1794年製のジュゼッペ・ガダニーニ「クレモナ」を使用とのことですが、ホールいっぱいに鳴り響く音量豊かな、落ち着きのあるヴァイオリンの音色も素晴らしかったです。豊潤な赤ワインという感じでしょうか。

 そして特記すべきは容姿の素晴らしさ。チラシの写真よりずっと美人です。演奏する姿は女神の如く美しく、妖艶さを感じさせ、ヴィジュアル的にも楽しませてくれました。演奏が終わった後のスマイルは優しさがあり、チャーミングでした。

 さて、今度は協奏曲でも聴いてみたいところですが、実は7月に、妙高市でオーケストラアンサンブル金沢とベートーヴェンの協奏曲を演奏します。指揮は、なんとダニエル・ハーディング。せめて長岡あたりなら駆けつけるのですが、妙高は遠すぎますね。

 帰り道は冷たい雨が降り始めましたが、早くも今年のベストコンサートの候補になりそうな演奏で、満足気分で家路に着きました。
 

(客席:E−7、全席自由:2000円)